- 著者
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坪井 真
- 出版者
- 作新学院大学女子短期大学部
- 雑誌
- 作新学院大学女子短期大学部研究紀要 = Sakushin Gakuin University Women's College Research Bulletin (ISSN:24337064)
- 巻号頁・発行日
- no.3, pp.11-20, 2019-12-27
本稿は、社会福祉史の分野で多くの業績を残した吉田久一の先行研究から、福祉思想に関する主要な研究成果(吉田1979・1989・2003)を取り上げ、史観を中心とした分析視座の特徴を分析・考察した。その結果、吉田の研究成果は、宗教と福祉思想の関係性が重要であり、西洋と日本における文化的・社会的特徴が福祉思想の通時的特徴に影響を及ぼすという分析視点を示した。一方、史観は、マルクス(Marx, K., H.)とエンゲルス(Engels, F.)が確立した唯物史観を基盤としつつ、当初から下部構造と上部構造の相対性を重視している点が特徴であった。また、吉田はヴェーバー(Weber, M.)による理念型も論究しているが、宗教と福祉思想の関係性に着目した社会科学的な史観は検討課題として残されている。したがって、ヴェーバー(Weber, M.)による宗教的エートスを鍵概念に位置づけた史観を確立することが今後の研究課題である。