著者
今野 哲也
雑誌
芸術研究:玉川大学芸術学部研究紀要 (ISSN:18816517)
巻号頁・発行日
no.9, pp.41-53, 2018-03-31

本研究の目的は、F. シューベルトの歌曲《ドッペルゲンガー》D957―13を対象に、どのような和声技法に基づき、H. ハイネの詩の世界が表現されているのかを検証することにある。この歌曲で展開される和声上の特徴は、①パッサカリアの手法、②「属7の和音」とその変容体としての「増6の和音」、③「属7の和音」と「ドイツの6」を媒体とする異名同音的転義に集約されよう。合計4回現れるパッサカリア主題内部のドミナントは、「属7の和音」から「ドイツの6」へと順次変容してゆくが、その実それは、この歌曲の唯一の転調部分からの離脱和音であることの布石にもなっている。その転調部分は、この歌曲の主人公とも言える「ある男」惑乱が最高潮に達する場面でもある。これらの和声的特徴は、歌詞と密接に連関しており、「ある男」がゆっくりと、確実に狂気へと突き進んでゆく様を表現する上でも、必要不可欠なものであったと、本研究は結論付けるものである。

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備忘録。こんな研究をなさっている方が。 《ドッペルゲンガー》D957―13に見られる「属7の和音」の変容の技法―F. シューベルトの多義的和声の考察― p.50にある通り、行って帰っての転調を2セット行っている。 https://t.co/PUyVnIIVHA

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