- 著者
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Hatori Tokutaro
- 出版者
- 東京大学地震研究所
- 雑誌
- 東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.1, pp.97-110, 1981-08-31
最近50年の間に,アリューシャン・アラスカ海域におこった5個の巨大地震に伴った津波について,米国のCGS記録に日本の観測データも加え,津波の規模と波源域を調べ,この海域の津波特性を検討した.まず,各津波の規模(m:今村・飯田スケール)を,震央から島弧にそった沿岸の波高データをもとに,筆者の方法で判定すれば,ハワイに大被害を与えた1946年津波はm=3と格付けされる.この地震のマグニチュードはM=7.4とみなされているが,津波データによれば地震モーメントM0は1.5×1029ダイン・cmと見積もれる.一方これとは対照的に,地震規模が上回った1938年のアラスカ半島沖地震(M=8.3)の津波は,m=2と推定される.そのほか1964年アラスカ津波はm=4,1957年・1965年のアリューシャン津波はm=3と見積もれ,それぞれ地震モーメントに見合った津波であった.各地で観測された津波の伝播時間をもとに,逆伝播図から波源域を推定すると,1964年アラスカ津波の波源域の長さは700kmで,余震域と大体合致する.しかし,1946年津波の波源域は余震域と著しく異なり,ウナラスカ島からウニマク島に至る長さ400kmと推定される.1957年津波の波源域は,余震域とほぼ合致して900kmにもなり,そのほかの津波も日本近海の津波と比べて,波源域は数倍も長い.1964年アラスカ津波では40分の周期が卓越したのに対し,1946年・1957年・1965年津波の周期は10~20分と短かく,波源域が海溝寄りにあったことを暗示している.解析の結果,この50年の間に,各波源域はアッツ島沖からアラスカに至る海域に,島弧にそって並んで分布しているが,アラスカ半島ぞいのウニマク島からシュマーギン島に至る400kmの間に津波の空白域が見出せる.これは,近い将来,この区間にm=2~3クラスの津波発生の可能性が大きいことを考えさせる.