著者
ОНО Токико
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室
雑誌
Slavistika : 東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室年報
巻号頁・発行日
no.35, pp.127-146, 2020

『ミルゴロド』収録作の中で,『ヴィイ』は歴史との関連で論じられることが少なかった。本稿ではゴーゴリのウクライナに関する歴史認識が『ヴィイ』において寓意性の高い表現を獲得しているという見方に立ち,『ヴィイ』に現れたゴーゴリの歴史認識の内実と,ウクライナへの眼差しを考察する。 第一章では,ゴーゴリの歴史家としての活動を学術上の保守的な党派性,出身階層に見られる社会意識との関連から考察し,ゴーゴリの歴史観を形作った社会的条件を整理する。第二章ではプロップによる魔法物語の分析方法に照らして『ヴィイ』の構造分析を行い,パンノチカがウクライナの内部から共同体を崩壊へ導く存在であることを論じる。第三章では『ヴィイ』がいかなるテーマを寓意しているかをウクライナ史に即して分析し,コサック社会の内部からの崩壊とロシア支配が問題化されていることを論じる。 ゴーゴリのウクライナ内部からの眼差しと保守派のイデオロギー的矛盾は,歴史学の場では解決されなかった。ロシア支配をめぐる歴史認識は『ヴィイ』において暗示的に,かつ複雑さを保持して表現された。ここに帝国支配の容認とコサックの文化的世界への愛惜を,政治性を回避してウクライナの内部から表現する,異民族としての意識が読み取れる。[寄稿]

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CiNii 論文 -  «Вий» и историческое мышление Гоголя : анализ мифологической структуры «Вия» и взгляда Гоголя на украинскую историю https://t.co/GRV46vzpLS #CiNii

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