- 著者
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今道 友信
- 出版者
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構
- 雑誌
- 情報管理 (ISSN:00217298)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.10, pp.649-657, 2008
情報倫理についてここでは主として以下の4項目について述べる。1) 日本では古来「情報」はどのように考えられていたか。それは主として初めはただの「知らせ」であったが次第に噂の対極にある「告知」とか「命令」「報告」といった公的権威のあるものとして考えられていた。それゆえ,語に重圧があった。2) 知識社会が情報社会化するにつれて,言語が機械化され,情報は情報機器を介して収集される知識と考えられ,当初は世界中で情報は一般市民にとって受信の対象であった。それが情報機器の普及とともに神話の「隠れ蓑」の実現のようになり,無責任な発信が多くなってきた。ここから,情報機器使用の倫理が情報倫理の新しい部門となってきた。3) 学術情報と情報社会の構造的非倫理性や情報学に関わる倫理の問題が挙げられている。4) 情報倫理に関する本質的考察として,その基礎的命題を論じつつ,エコエティカ(生圏倫理学)との関わりに触れ,情報倫理が空間倫理から時間倫理を,さらに音の倫理を意識させることになった由来などを展開しながら,情報倫理が文明文化の社会における他者意識の覚醒をもたらすこと,それも魂の世話としての哲学の一環であることを述べ,情報倫理の一つとしての否定工学の使命にも言及する。<br>