著者
佐藤 翔
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.607-617, 2014-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
28

PLOS ONEは2006年に創刊されて以来,急速な成長を続け,2013年には年間3万本以上の論文を掲載する,世界最大の雑誌となっている。本稿ではその出版母体であるPLOSの歴史や,論文データベースやWebサイトから得られる情報に基づき,PLOS ONEの「これまで」「いま」,そして「この先」の可能性を論じる。PLOS ONEは「研究成果の迅速・自由な共有の実現」というPLOSのもつ文脈の下で刊行され,大きな成功を収めたようにもみえる。しかし,PLOS Biologyなど高インパクトの雑誌の赤字をPLOS ONEの収益で補填(ほてん)している現状は,OA出版のビジネスモデルの限界を示している。そして統計データによれば,どうやら,PLOS ONEの成長は,止まったようでもある。
著者
村田 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.13-20, 2012 (Released:2012-04-01)
参考文献数
6
被引用文献数
4 or 0

EPUB3は,HTMLとCSSなどのWeb技術に基づいた電子書籍フォーマットである。EPUB3は国際化されており,その1つとして日本語組版を扱うことができる。縦書き等の機能は,まずW3CにおいてCSS Writing ModesとCSS Textを作成し,次にIDPFにおいてこれらをもとにEPUB3を作成することによって導入された。この標準化経験に基づいて,国際的標準化において日本が陥りやすい落とし穴を指摘し,成功するアプローチを示唆する。
著者
福井 健策
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.661-668, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
1

日本が今,貴重な予算をかけても早急に整備すべきインフラは「知のインフラ」である。欧米がその整備にしのぎを削る文化資料の巨大デジタルアーカイブについては,わが国でも価値ある活動は少なくないが,その多くは「ヒト・カネ・著作権」というべき課題にあえいでいる。特に大量の文化資料をデジタル公開しようとすれば権利処理の手間は膨大となり,わけても,探しても権利者が見つからない「孤児作品」の問題は深刻で,欧米でも対策が進む。わが国でも権利処理を推進するために,(1)権利情報データベースの整備,(2)パブリックライセンスの普及,(3)孤児作品対策を含むアーカイブ法制の立案,などの対策を早急に進めるべきである。
著者
高瀬 拓史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.618-628, 2014-12-01 (Released:2014-12-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3 or 0

EPUBは電子出版物の交換および配信フォーマットの標準である。今日,主要な電子書籍ストアのほとんどは,何らかの形でEPUBを利用している。EPUBの普及を支えた要因には,(1)Web標準をベースにしていること,(2)オープンでロイヤルティーフリーであること,(3)多様な読書環境に対応していること,があげられる。本稿ではEPUBの特徴,データ構造,表現力を紹介し,課題と近年の動向についても触れる。EPUBは電子出版にかかわるさまざまな要件を満たしており,今後も重要なフォーマットであり続ける可能性が高い。
著者
高田 智和 矢田 勉 斎藤 達哉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.438-446, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 or 0

変体仮名は平仮名の異体字であるが,現代の日常生活ではほとんど用いられていない。しかし,1947年以前には命名に使われ,戸籍など行政実務において変体仮名の文字コード標準化のニーズがある。一方,日本語文字・表記史や日本史学の学術用途においても,変体仮名をコンピューターで扱うニーズがある。そこで,活版印刷やデジタルフォントから集字し,学術情報交換用変体仮名セットを選定した。このセットには,変体仮名の機能的使い分けを表現するため,同字母異体も収録した。行政用途の変体仮名と合わせ,2015年10月にISO/IEC 10646規格への追加提案を予定している。
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.826-832, 2013-02-01 (Released:2013-02-01)
参考文献数
8

住民基本台帳ネットワーク統一文字は,当初はUCS(国際符号化文字集合)を拡張する形で設計されており,いかなるコンピューターでも使用できるオープンなシステムを目指したはずだった。しかし,UCSの基本設計に対する誤解や,その後のUCSの変化に十分追随できなかったために,住民基本台帳ネットワーク統一文字は,もはや現代のOS上では動作しない文字コードになってしまっている。本稿では,住民基本台帳ネットワーク統一文字の問題点と,その問題点を踏まえた上での今後の方策について述べる。
著者
大久保 ゆう
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.829-838, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
3

ボランティアで運営されているインターネット上のデジタルテキスト・アーカイブである青空文庫は,その主たる形式として,テキストファイル(拡張子.txt)を扱っている。本稿では,テキストファイルに施す青空文庫独自の注記や,作業にまつわる問題点や解決法,そのほかテキストファイルの利点などを,その歴史的な経緯や今後の展望とともに解説する。とりわけJIS漢字コードと,書籍の体裁や組み版の情報を残すための注記を,いかに整理して効率的に運用するかが課題であり,そのためのツールや資料が各種開発されたことを概説するものである。
著者
重田 勝介
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.677-684, 2014-01-01 (Released:2014-01-01)
参考文献数
15
被引用文献数
5 or 0

近年,「反転授業」とよばれる授業形態が注目を集めている。反転授業とは,授業と宿題の役割を「反転」させ,授業時間外にデジタル教材等により知識習得を済ませ,教室では知識確認や問題解決学習を行う授業形態のことを指す。タブレット端末やデジタル教材,インターネット環境など情報通信技術(ICT)を活用した反転授業の教育実践が初中等・高等教育で広がっている。反転授業の普及の背景には,オープン教材(OER)とICTの普及があり,わが国においても初中等教育や高等教育での導入事例がみられる。反転授業の導入によって,学習時間を増やし教室内で知識を「使う」活動を促し,学習の進度を早め学習効果を向上させることが期待される。一方で,反転授業の実施にあたっては,学校や家庭におけるICTの環境整備やオープン教材の普及,自習時間の確保や教員の力量形成が課題となる。
著者
成川 祐一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.69-78, 2017-05-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
7

難しい漢字や言葉は使わない,常識ある大人なら誰でも読めるわかりやすい記事――。共同通信と全国の加盟新聞社向けの新聞記事の書き方の手引である『記者ハンドブック』は,やさしくわかりやすい文章のための用字用語集としてマスコミ以外でも幅広く使われている。1956年の初版から60年,義務教育の課程と重なる国の国語施策をベースに手直しを加え,言葉の意味や表記の変化には少し遅れてついていく姿勢で改訂を重ねてきた。本稿は戦後の書き言葉の大きな変化の中,記者ハンドブックの基礎ができるまでの過程を振り返るとともに,最近の事例として2010年(第12版)と2016年(第13版)の改訂を取り上げ,常用漢字表改定への対応やインターネットの横書きに対応した数字表記変更などを紹介する。
著者
村上 憲郎
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.71-77, 2013-05-01 (Released:2013-05-01)
被引用文献数
2 or 0

ビッグデータと呼ばれているものには,3つの段階がある。まず,従来の統計処理の手法だけでも実現可能なビッグデータ1.0の段階。次に,従来の統計処理の手法に加えて,HadoopやCassandraといった大規模データの大規模分散処理を援用することによって実現可能なビッグデータ1.5の段階。さらに,それに加えて,ニューラルネットワークによる機械学習といった人工知能の技術を必要とするビッグデータ2.0の段階。SNSやIoTが生成する膨大なデータは,その膨大さによって,ビッグデータ1.0をビッグデータ1.5の段階へ,さらに,そのデータの非定型さによって,ビッグデータ1.5をビッグデータ2.0の段階へと,切り拓きつつある。
著者
中井 万知子 藤倉 恵一 橋詰 秋子 福山 樹里 神崎 正英
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.209-217, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
4

日本図書館協会(JLA)と国立国会図書館(NDL)が,日本十進分類法(NDC)をLinked Data化するために,2015年4月から2016年3月まで実施した共同研究の成果を報告する。NDCは,JLAが編集発行するわが国の標準分類法である。研究では,NDCの新訂8版と新訂9版を対象とし,JLAが機械可読形式化したMRDFを基に,Linked Data形式のデジタルデータを試行的に作成した。想定利用者のニーズが情報システムでの利用にあることを踏まえて作成方針案を策定したうえで,NDCの概念的な階層関係を基にした分類項目間の階層構造モデルの構築,記述語彙の選定,ラベルの構造化,補助表による分類項目の合成,相関索引等からの分類項目の機械生成等を行った。また,Linked Dataとして外部データとのつながりを生むために,国立国会図書館件名標目表へのリンクを含めた。今後は共同研究の成果に基づき,JLAにおいて提供や利用に関する調査・検討を行う予定である。
著者
松澤 孝明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.222-235, 2013-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3 or 0

本報告は,研究不正に対する関心の高まりを受け,その低減を図る観点から,わが国の研究不正についてマクロ分析を行ったものである。データの捏造,改ざんおよび盗用を含む研究不正についての公開情報を収集し,主として研究不正が発生した機関の特徴や研究不正の責任が問われた研究者の役職や年齢構成,研究不正の動機などに着目した分析を行い,わが国の研究不正の特徴,および研究不正低減のための取り組みについて考察を行った。
著者
佐藤 翔 上田 真緒 木原 絢 成宮 詩織 林 さやか 森田 眞実
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.908-918, 2016-03-01 (Released:2016-03-01)
参考文献数
10

2002~2013年に日本の学協会誌に掲載された論文120万9,674本を対象に,どの程度オンラインで入手できるのかを調査した。調査にあたっては1)CiNii Articlesを用いた調査,2)J-STAGE・メディカルオンラインへの収録状況調査,3)サーチエンジンを用いたサンプリング調査,という3つの方法を採用した。結果から,日本の学協会誌掲載論文のうち,7割以上は何らかの形でオンラインで入手可能であると見積もられた。特に英語論文や自然科学分野の論文は,オンラインで入手可能なものが多い。一方で,人文学分野ではオンラインで入手できる論文が43.7%,社会科学分野でも51.5%にとどまっていた。
著者
伊藤 祥
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.525-535, 2013-11-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
29

日本の学術情報流通に特有な言語の問題を議論するための基礎的なデータを示した。日本と海外の文献データベースをマッチングして,日本の大学から生産される科学・技術・医学分野の学術文献を使用言語の観点から分析した。その結果,日本の大学研究者は原著論文には英語を使用し,解説的文献や短報・予稿等には日本語を使用する傾向にあることがわかった。また,英語の原著論文数は最近10年の間増加しておらず,大学が英語での研究成果発信を重視する傾向は,大学研究者の全体的な論文生産数には現時点で反映されていないことが明らかとなった。