- 著者
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富永 真琴
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.124, no.4, pp.219-227, 2004
- 被引用文献数
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8
日本に暮らす私たちは1年を通して四季折々様々な温度を感じて過ごしており,さらに,約43度以上と約15度以下は温度感覚に加えて痛みをもたらすと考えられている.私たちはそれらの温度を感じ,意識的・無意識的にそれに対応して熱の喪失や産生等を行っている.外界の温度受容の場合,末梢感覚神経が温度刺激を電気信号(活動電位)に変換してその情報が中枢へと伝達されると考えられているが,温度受容に関わる分子として,哺乳類では6つのTRPチャネル;TRPV1(VR1),TRPV2(VRL-1),TRPV3,TRPV4,TRPM8(CMR1),TRPA1(ANKTM1)が知られており,それぞれに活性化温度閾値が存在する(TRPV1>43度,TRPV2>52度,TRPV3>32-39度,TRPV4>27-35度,TRPM8<25-28度,TRPA1<17度).TRPV1,TRPV4とTRPM8は,その活性化温度閾値が一定でなく変化しうる.TRPV1の活性化温度閾値は代謝型受容体との機能連関によって30度近くまで低下し,体温が活性化刺激となって痛みを惹起しうる.これらの温度感受性TRPチャネルは感覚神経に多く発現しているが,皮膚表皮細胞等ほかの部位に発現しているものもある.この6つの温度感受性TRPチャネルのうち,TRPV1,TRPV2,TRPA1は温度刺激による痛み受容にも関与していると思われる.身近でありながらほとんど明らかでなかった温度受容のメカニズムが受容体分子の発見ととも明らかになりつつある.<br>