- 著者
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白川 俊之
- 出版者
- 数理社会学会
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, no.2, pp.249-265, 2010
日本とアメリカにおいて,ひとり親家族で育つことが子どもの学力形成にあたえている影響を検討する.父不在と母不在とで,子どものリテラシーへの影響の程度と影響が生じる過程が異なりうることをふまえ,2つの仮説を提示する.ひとり親家族は貧困であったり経済的に不安定であったりするため,子どもの学力形成に不利が生じると,第1の仮説は主張する(経済的剥奪仮説).一方,第2の仮説は,ひとり親家族における子どもへの教育的関与の水準の低さが,学力低下の原因になっているという可能性に着目するものである(関係的剥奪仮説).これらの2つの仮説を手がかりに,父/母不在家族のそれぞれを両親のそろった家族と比較したとき,子どもの学力形成に関してどのような不利が見られるのかを分析する.PISA2000のテスト結果から学力の指標を取り出し家族構成との関係を調べたところ,日米に共通の結果として,以下の知見がえられた.(1)子どもの学力は家族の形態で有意に異なり,母不在家族の子どもの学力がとくに低い.(2)家族形態と資源保有との関連については,父不在家族において経済的資源の不足が見られる.母不在家族では経済的資源の不足に加えて,関係的資源の顕著な不足が特徴的である.(3)父不在家族の子どもの学力の低さの背後には,経済的な不利が要因として働いている.(4)母不在家族の子どもの低学力は,家族単位の資源不足の観点からは説明することができない.