著者
安井 勉
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.163-167, 1958

筋肉色素中のおもな成分の一つであるミオグロビン(Mb)の加熱変性の問題を研究することは,加熱肉製品中のMbの状態を推定する有意義な方法と思われるので,結晶馬Mbを用いて検討を試みた。その結果次のことが明きらかとなつた。<br>1) Mbはヘモグロビンと異なり,1/10N NaOH溶液中でほとんど変性しない。<br>2) 一酸化窒素Mbを加熱凝固させて,1/10N NaOH溶液中でとかすと,その吸光像は,未変性のもののそれと類似した像を示す。その他の誘導体の光学的性質も同様の傾向を示すことから,Mbの加熱凝固現象には可逆的な部分があると考えられる。<br>3) 加熱凝固メトミオグロビン(met Mb)について,アルカリ処理後中和して,その変性からの回復率を予備的に色々な実験条件で観察した結果,沸騰水中で加熱した場合,蒸留水中では5分間で約80%,30分で約40%,1/15M燐酸緩衝液中では5分間で65%,30分で40%,3%NaCl液中では5分間ぞ約20%,30分以上で約14%が,来変性Mbの光学的特徴をもつたものとして回収された一方,70°で加熱した場合は,いずれの溶液中でもほとんど凝固が起こらず,その90%近くが未変性な形のままで存在していた。<br>4) 加熱凝固met Mbから得られたMbは,未変性のものと同じように,色々なMb誘導体を形成し,その吸光像は,未変性Mbのそれと全く一致した傾向を示した。<br>5) これらの事実から,Mbの加熱変性は2つの段階から成ることが推定された。

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