著者
高志 勤 生頼 孝博 山本 英夫 岡本 純
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.277-287, 1979
被引用文献数
5

土を密閉系で水飽和状態で部分凍結し, 間隙水圧の変化を観測することによって凍上力の上限を推定する室内実験を行った.<BR>軸方向に一定の全圧をかけた円柱状供試体の両端を正, 負の一定温度に保った場合, 熱的には数時間でほぼ平衡に達するが, 間隙水圧の変化は2000時間以上継続する場合もあり, 平衡に達するには長時間を要することがわかった.更に, 凍土内部で冷却面に接してアイスレンズが発達しつづけていた.このことは, 凍土内部では凍結面からアイスレンズ成長面まで不凍水が連続していて, 不凍水が凍土中をアイスレンズに向って吸い寄せられ, そのために間隙水圧が降下したことを示している.平衡に達したとき, 土は間隙水圧と全圧から計算される有効応力状態に抗してもはや水分を吸い寄せ得なくなったと解釈し, このときの応力をその凍結条件における上限凍上力σ<SUB>u</SUB>と定義した.得られた上限凍上力σ<SUB>u</SUB>は冷却面温度θ<SUB>c</SUB>に依存し<BR>σ<SUB>u</SUB>=-11.1θ<SUB>c</SUB> [kg/cm<SUP>2</SUP>] <BR>なる実験式を得た.これは方法は異なるがRadd and Oertle (1973) の実験結果と一致する. 更に, この実験式は, 凍土内部の氷層消長面における熱力学関係から, 氷と水の圧力が異なって変化する場合の氷の融点に関する拡張したClausius-Clapeyronの式と一致することがわかった.

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