著者
三宅 恒夫
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.55-59, 1963 (Released:2009-09-04)
参考文献数
5
著者
菊地 勝弘 神田 健三 山崎 敏晴
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.441-448, 2006-09-25 (Released:2009-08-07)
参考文献数
30

第2次世界大戦末期の昭和18~20年の冬期に,北海道ニセコアンヌプリ山頂の着氷観測所で実験機として使用されたと思われる,「零式艦上戦闘機(通称:ゼロ戦)」の右主翼が1990年8月初旬山頂東側の沢で発見され,その後2004年に回収されて,2005年12月22日から北海道倶知安町の風土館に常設展示されて話題を集めている.それは,60年前のゼロ戦の翼という野次馬的な見方の他に,もはや着氷観測所などといった言葉さえ知らない世代が増えた昨今,そもそも着氷観測所はどんな観測所で,どんな実験をしていて,その結果はどうなったのであろうかという興味とは別に,関連する資料の展示,解説,当時の写真や新聞記事に見られる実験機が,ゼロ戦とは違う「九六式艦上戦闘機(通称:九六式)」のものが多かったからである.どうしてこのようなことになったのか?マスコミ関係や専門家の間で注目されてきたが,幸い「中谷宇吉郎雪の科学館」が所蔵している,当時北海道大学助手で,直接この実験の担当者だった黒岩大助(元北海道大学低温科学研究所長)が撮影していた写真のアルバムから,中谷宇吉郎門下生の一人だった樋口敬二(名古屋大学名誉教授)の考察によって,昭和18~19年の冬が九六式,19~20年の冬がゼロ戦であったという結論が得られた.この報告では,ゼロ戦主翼の発見を契機として着氷観測所ではどのような実験が行われたのか,その実験の主目的であった飛行機の着氷について,使用された実験機の機種とそれに関連するいくつかの疑問について整理したものである.
著者
梶川 正弘
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.349-355, 1995-11-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

雪片成長の初期過程を探るため,針状雪結晶の集合特性(衝突・付着過程の特性)を結晶2個から成る雪片の顕微鏡写真により調べた.両結晶の付着型は,交差付着型と点付着型に分類された.交差付着型は,両結晶のサイズが類似し,したがって落下速度差が小さい場合に多くみられた.一方,点付着型の割合は,両結晶のサイズの差が大きく,落下速度差が大きい場合に増加した.両結晶のc―軸のなす角度は,交差付着型で直角に近いものが多数を占めたが,点付着型ではその頻度分布に目立った特徴はみられなかった.これらの結果は,交差付着型と点付着型の雪片が,各々両結晶まわりの流れの相互作用と小さい結晶の大きい結晶への慣性衝突に主に起因することを示唆している.
著者
今西 伸行 西村 浩一 森谷 武男 山田 知充
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.3-10, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

雪崩発生に伴う地震動の特徴を把握するとともに,雪崩の発生地点と規模を推定する手法を確立するため,4台の地震計を用いて,2001年1月から4月までの80日間,北海道大学天塩研究林内で観測を行った.期間中に,対象域で確認された雪崩の86%にあたる50例の震動波形を得ることができ,地震計によって高い確率で雪崩発生のモニタリングが可能であることが判った.ほぼ同地点で発生した雪崩による震動は類似した波形を示すこと,震動の卓越周波数と地震計から雪崩発生点までの距離との間には負の相関があり,これから発生点の推定が可能であること,また雪崩の運動エネルギーと位置エネルギーとの関係を用いて,雪崩質量の推定が可能であることが示された.
著者
Anatoli BROUCHKOV Gennady GRIVA
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.241-249, 2004-03-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
13
被引用文献数
2 4

本稿では,寒冷地域での主にガスパイプラインの現状について,既存の情報と筆者らの研究結果とをあわせて述べる.永久凍土帯のパイプラインではパイプ周辺の地盤とパイプとが直接的な相互作用をする.この部分では凍結・融解によるさまざまなプロセスが発生・活発化する.パイプ周辺の湿地化の結果,ガスパイプラインには顕著な水平方向および鉛直方向の変位が生じ,強い応力腐蝕によるパイプの破壊が起こる.氷点下の温度でパイプラインを稼動させた場合には,ガスパイプラインが通過するタリクの凍結にかかわる新しい問題が発生する.最近の統計では,これらの問題とかかわっていると考えられる事故が数多く報告されている.
著者
渡辺 貫太郎
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.126-133, 1960 (Released:2010-05-07)
参考文献数
23
著者
田邊 章洋 志水 宏行
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.297-308, 2022-07-15 (Released:2022-08-10)
参考文献数
41

雪崩の流動・停止プロセスの理解及び予測は防災上重要である.雪崩到達範囲を物理法則に基づき定量的に予測するために,数値シミュレーションを活用する動きが近年活発化している.それらの数値計算では,計算のコストや現象の再現性の観点から,三次元の流れを厚さ方向に平均化した二次元流として近似する理論(浅水流理論)に基づくモデルが主に用いられる.本稿では,浅水流理論に基づく雪崩動力学シミュレータの1つfaSavageHutterFOAMについて解説する.faSavageHutterFOAMは,高濃度粒子流(流れ型雪崩)の基礎方程式を解くオープンソース数値コードであり,OpenFOAMをプラットフォームとして開発された.本解説では,faSavageHutterFOAMの基礎方程式,ファイル構成,計算条件の設定方法,任意の地形上での雪崩計算の実行方法,地理情報システム(GIS)による数値計算結果の可視化方法について説明する.
著者
桜井 兼市 孫野 長治
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.72-77, 1963 (Released:2009-09-04)
参考文献数
3

Vertical profiles of electric potential near surface were observed during blowing snow at the top of Mt. Teine, 1959, 60 and 61. By the use of the data, vertical distributions of layer charge or space charge were calculated. These charges are supposed to be carried on the blowing snow particles or ions. The vertical distribution showed that a layer of positive charge and another layer of negative charge existed just near the surface and around 1 m above the surface respectively. This result seems to be favourable to explain the confused discrepancy among the results obtained hitherto by Simpson, Yoshida and Ôta.
著者
上石 勲 早川 典生 川田 邦夫 千葉 京衛
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.127-136, 1994-06-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
6

新潟県新井市の大毛無山の新井スキー場には,雪崩対策として,プロパンガスと酸素の混合物を爆発させ雪崩を誘発する“ガゼックス”が設置されている.これを使用して,1992年1月~3月にかけて数回の人工雪崩実験を行い,大規模な雪崩発生に成功した.雪崩発生時の積雪構造と雪崩規模について解析した.また1993年5月には,ガゼックスの爆発による雪面と積雪内部の空気圧測定実験を行った.その結果,ほぼスキーヤー1人の荷重に等しい空気圧を得た.
著者
土屋 巌
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.319-329, 2001-05-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
18

鳥海山(2236m, N39°06', E140°03')南斜面に散在する吹きだまり型の万年雪(多年性残雪)のなかで,「心字雪」はその字画のように数か所に分かれている.2画目「大雪路」下部の標高約1600mにある「心字雪(S5)」は長年月にわたって消失したことがないが,その雪氷現象についての観察結果を,周辺の他の万年雪の場合と比較検討した.「心字雪(S5)」は「氷河の国際分類」に基づいて小氷河に分類していたが(土屋,1974),1972~2000年期間に1996年が最大で1998年が最小であったなどの規模の年々変動,基盤地形と涵養機構との関連,形態的特色等を説明した.「心字雪(S5)」が最小規模のときに観察できた基盤地形は,ごく小型ながら典型的圏谷地形であることを説明し,氷体が13年以上かけて圏谷底まで運んだ一つの巨礫の履歴を示す写真記録等に基づいて関連現象を考察した.
著者
松下 拓樹 西尾 文彦
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.541-552, 2004-09-15
被引用文献数
1 5

過去14冬季間(1989年11月~2003年5月)における気象庁の地上気象観測資料から,着氷性の雨,着氷性の霧雨,凍雨の発生に関する地域分布と,季節変化および経年変化を調べた.日本では,これらの降水種は1月から3月の時期に発生することが多く,毎年10回程度の割合で観測されている.このうち着氷性の雨の発生率は毎年数回程度で,12月~1月に発生する場合が多い.<BR>着氷性の雨と凍雨の発生率が高いのは,中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部である.この両地域に着目して,着氷性の雨や凍雨が発生するときの気象条件の形成過程を調べたところ,地上付近の寒気層の形成は,局地的な気象現象や地形の影響を強く受けることがわかった.内陸山間部では盆地地形による冷気湖の形成が関与しており,太平洋側平野部では内陸からの寒気流出によって地上付近の寒気層が形成される.一方,上空暖気層の形成は,総観規模の気圧配置に伴う暖気移流に起因する.
著者
竹内 政夫
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.303-310, 1999-07-15
被引用文献数
2 2

雪粒子は光の波長と比べて大きく光は主に反射によって減衰する.また,目の近くの雪粒子一個一個が目に見えることが,その残像も含め視程にも悪く影響している.雪道では吹雪によってホワイトアウト(白い闇)の状態になることもあり,交通の安全を阻害し時には交通の確保を困難にしている.吹雪時の視程は,風速と降雪強度の変化や沿道環境の不連続によって,大きく変動しそれが事故の誘因となっている.また,白い背景に吹き舞う白い雪は,人の目を奪い本来あるべき視程(潜在視程)も見えなくしている.<BR>雪粒子による光の減衰機構,視程への影響を述べ,道路における視程の特徴について紹介した.
著者
佐伯 正夫 若林 隆三 渡辺 成雄 大関 義男 庭野 昭二
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.15-20, 1981
被引用文献数
3 4

新潟県苗場山塊の標高1,000&sim;1,300m,積雪深3&sim;5mの豪雪急斜地において,斜面雪圧によるブナ伐根の脱落現象と雪崩の発生に至るまでの経過を8冬期にわたって調べた.<BR>1.伐根の地上高が大きいものほど,雪圧によって伐採後早い年代に脱落する.<BR>2.皆伐跡地では,雪圧によって伐根が伐採後7年目から転倒しはじめ,10年目には伐根本数密度が当初の半分以下に減少した.<BR>3.伐根本数密度の減少とともに,積雪移動量は増加する.草地化した皆伐跡地の急斜面では,伐根が100本/ha以下になると全層雪崩が発生する.灌木地になった皆伐跡地では伐根が50本/ha以下になると,全層雪崩の危険性が生ずる.<BR>4. 択伐跡地では,たとえ強度な択伐の跡であっても,全層雪崩の発生はない.豪雪急斜地の伐採方式として択伐が特に望まれる.
著者
山口 悟 西村 浩一 納口 恭明 佐藤 篤司 和泉 薫 村上 茂樹 山野井 克己 竹内 由香里 Michael LEHNING
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-57, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
6
被引用文献数
4

2003年1月5日に長野県南安曇郡安曇村の上高地乗鞍スーパー林道で起こった複数の雪崩は,死者こそ出なかったが車20台以上を巻き込む大災害となった.雪崩の種類は面発生乾雪表層雪崩であった.今回の雪崩の特徴は,従来雪崩があまり発生しないと考えられている森林内から発生したことである.現地における断面観測より,今回の雪崩は表層から約30cm下層に形成された“こしもざらめ層”が弱層となり発生した事がわかった.積雪変質モデル並びに現場近くの気象データを用いた数値実験でも,同様の“こしもざらめ層”の形成を再現することができた.弱層になった“こしもざらめ層”は,1月1日の晩から1月2日の朝に積もった雪が,3日早朝の低温,弱風という気象条件下で変質して形成されたと推定される.今回の研究結果により,雪崩予測における積雪変質モデルの適応の可能性が明らかになった.また,考えられている森林の雪崩抑制効果に関してより詳細に検討する必要性があることも示された.
著者
若濱 五郎
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.581-600, 2017 (Released:2023-03-01)
参考文献数
41

中谷宇吉郎先生は雪氷学の世界的な研究者である.天然雪の結晶の分類,人工雪の作成,種々の結晶形の生成条件など世界に先駆けた独創的な研究は,戦後発展した雲物理学,人工降雨,結晶成長などの基礎となった.中谷ダイヤグラムは現在も世界の科学者が結晶成長,形の物理の立場から研究されている.先生は更に積雪,凍土,着氷雪,霧など,寒冷地における自然現象と人間との関わり合いを総合的に研究する新分野「低温科学」を創始された.これは「雪氷寒冷圏の環境研究」の先駆けとなった.先生は実用研究も重視され,雪氷災害の軽減防除,水資源の調査などを広汎に行なった.戦後,先生はアメリカに招かれ,雪氷永久凍土研究所(SIPRE)の創設の指導をされる傍ら,念願の雪氷三部作(雪,積雪,氷)の完結を目指し,グリーンランドを舞台にして積雪の氷化過程,深層氷の物理研究を開始された.その途上,病に倒れられ,未完に終ったのは残念至極である.先生は寺田寅彦を師と仰ぎつつ,講演,文筆を通じて科学を一般に普及した.誰にも分かり易く面白く,かつ哲学や教訓も含む中谷独自の世界を展開した多数の随筆は,今も広く愛読されている.先生は今なお生きておられるのである.
著者
永井 裕人 田殿 武雄
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.43-61, 2017 (Released:2023-03-01)
参考文献数
65

人工衛星などを用いた宇宙からの地形測量は,近年まで様々な手法で行われてきた.得られた地形のデータはDEM(Digital Elevation Model)と呼ばれ,商用利用も拡大しており,氷河研究においても重要な基盤データの一つである.この解説では,光学ステレオ立体視および合成開口レーダを用いたDEM作成技術の発展を総括する.そして無償公開されている画素サイズ30mのDEM を日本国内の各種地形およびヒマラヤ氷河域で比較し,生じる差異を検証する.国内の平地から山岳地域まで3種類の地形において精度検証したところSRTM1とASTER GDEMに対して,ALOS World 3Dがすべての地形で最も高精度であることが分かった.またヒマラヤ氷河域で生じるデータの欠損は,SRTM1では急斜面に多く存在するのに対して,ALOS World 3Dでは積雪の可能性が高く,平坦で標高の高い地表面に多く存在する傾向が明らかになった.山岳氷河の研究においては,これらの精度や特性の差異を考慮したうえで,適切なDEMを選択することが望まれる.