著者
寺沢 弘文 江島 明男 杉森 正道
出版者
社団法人 有機合成化学協会
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1013-1020, 1991
被引用文献数
4

現在臨床評価が進んでいるCPT-11あるいはTopotecanは, いずれも植物から抽出した天然のCPTを原料とした半合成で製造されているが, 植物中の含有量が少ないことから大量供給には問題が残されており, また, 植物の成長が天候に大きく左右されることを考えると, 安定供給という面からも効率の良いCPTの合成法が望まれている。今回我々は, 天然型CPTの合成法の検討を行い, 光学分割および不斉合成法により, 天然型CPT合成のkeyとなる光学活性な3環性化合物の合成に成功し, 天然型CPTの大量合成に対応可能な効率的合成法を開発した。さらに, この3環性化合物を活用し, CPTの構造活性相関を探るべく骨格あるいは置換基の変換を検討した結果, <I>in vivo</I>および<I>in vivo</I>において非常に強い抗腫瘍効果を持つ, 新規な骨格の6環性化合物を得ることができた。CPTの単離, 構造決定から4半世紀が経過した現在, 再びCPTが脚光を浴びているのは, CPT-11が臨床試験で優れた効果を示し, 高い評価を受けていること, およびCPTのトポイソメラーゼIの阻害という全く新しい作用メカニズムが明らかにされたという2つの理由に拠る所が大きい。CPT-11, Topotecanに次いで9-アミノーCPTあるいは10, 11-メチレンジオキシーCPTなどが前臨床研究の段階にあり, しばらくはCPTに関する話題が尽きないであろう。

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