著者
植田 睦之
出版者
Japan Bird Research Association
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A19-A23, 2012

オナガ <i>Cyanpica cyana</i> はツミ <i>Accipiter gularis</i> の防衛行動を利用して捕食を避けるために,ツミの巣のまわりに集まってきて繁殖するが,ツミが巣の直近しか防衛しなくなった2000年代からは,ツミの巣のまわりで繁殖することは少なくなった.しかし,一部のオナガはツミの巣のまわりで繁殖し続けている.なぜ,一部のオナガがツミの巣のまわりで繁殖しているのかを明らかにするため,営巣環境に注目して2005年から2011年にかけて東京中西部で調査を行なった.ツミの巣のまわりのオナガの巣は1990年代よりも葉に覆われた場所につくられるようになり,通常のオナガの営巣場所とかわらなかった.またツミの巣の周囲に好適な巣場所が多くある場所でのみ,ツミの巣のまわりで営巣した.これらの結果は,オナガは1990年代同様,ツミのできるだけそばで繁殖しようとしてはいるものの,当時のように自分たちの巣の隠蔽率を無視してまでツミの巣の近くを選択することはなく,営巣場所選択におけるツミの巣からの距離と隠蔽率の優先順位が逆転したことを示唆している.

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