- 著者
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玉手 慎太郎
- 出版者
- Japanese Association For Mathematical Sociology
- 雑誌
- 理論と方法 (ISSN:09131442)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.339-354, 2011
本稿はアマルティア・センが提唱した「基礎的ケイパビリティの平等」について論じるものである.センの規範理論はしばしばケイパビリティの平等と混同されており,われわれの間で明確な理解がなされているとは言えない.また「基礎的ケイパビリティの平等」は,厳密に考察するならば,自由をどの程度まで保障するのかについて明確でないという問題を抱えていることがわかる.本稿は,自由を二重の重要性を持つものとして捉えるセン自身の考え方に即して「基礎的ケイパビリティの平等」を定式化し,この理論をケイパビリティの平等と明確に区別して示すとともに,保障範囲に関して明示的に理論に取り入れる.保障範囲の問題はいま広く議論されている責任の概念につながるものであり,この点について,本稿の定式化の含意として,責任平等主義に対するエリザベス・アンダーソンからの批判に応答が可能となることを示したい.