著者
小林 敬一
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.199-210, 2012
被引用文献数
3

本論文では, 大学生による紙上討議(論述文の中に産出された, 複数テキスト間の論駁的関係に対する応答), それとテキスト間関係の理解との関係, そしてこの2つの過程に及ぼす読解目標の効果を検討した。大学1年生95名に, 論争の構図を理解する読解目標(論争理解目標)条件か争点に関する自分の意見を生成する読解目標(意見生成目標)条件かのいずれかの条件で4つの論争的なテキストを読んでもらい, それから争点に関する自分の意見を論述してもらった。主な結果は次の通りである。(a) 論述文の中でどの論駁的関係にも応答していなかった者や論駁された論者の議論をその論駁に対する反論なしに利用した者が半数以上いた。一方, 全ての論駁的関係を踏まえてそれらに応答した者はほとんどいなかった。(b) テキスト間関係の理解は論駁的関係に対する応答を予測した。(c) 論争理解目標群は意見生成目標群よりもテキスト間関係の理解が優れており, この効果は論駁的関係に対する応答にまで及んだ。

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