著者
森永 康子 坂田 桐子 古川 善也 福留 広大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.375-387, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
44

「女子は数学ができない」というステレオタイプに基づきながら, 好意的に聞こえる好意的性差別発言「女の子なのにすごいね(BS条件)」(vs.「すごいね(統制条件)」)が女子生徒の数学に対する意欲を低下させることを実証的に検討した。中学2, 3年生(研究1), 高校1年生(研究2)の女子生徒を対象に, シナリオ法を用いて, 数学で良い成績あるいは悪い成績をとった時に, 教師の好意的性差別発言を聞く場面を設定し, 感情や意欲, 差別の知覚を尋ねた。高成績のシナリオの場合, BS条件は統制条件に比べて数学に対する意欲が低かったが, 低成績のシナリオでは意欲の差異は見られなかった。数学に対する意欲の低下プロセスについて, 感情と差別の知覚を用いて検討したところ, 高成績の場合, 低いポジティブ感情と「恥ずかしい」といった自己に向けられたネガティブ感情の喚起が意欲を低めていること, 怒りなどの外に向けられたネガティブ感情はBS条件の発言を差別と知覚することで喚起されるが, 数学に対する意欲には関連しないことが示された。
著者
岡田 有司
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.419-431, 2009

本研究の目的は,運動部と文化部を区分して捉え,部活動への積極性に注目しながら,(1)部活動への参加が学校生活の諸領域,学校への心理社会的適応とポジティブな関係にあるのか,(2)対人関係領域の心理社会的適応への影響が部活動への参加状況によって異なるのか,について検討することであった。質問紙調査によって得られた中学生894名のデータから,以下のことが明らかになった。まず,部活動に積極的な生徒は全体的に部活動に所属していない生徒に比べ,学校生活の諸領域や心理的適応の得点が高くなっていた。一方で,部活動に積極的でない生徒は全体的に学校生活の諸領域や心理的適応の得点が無所属の生徒よりも高いという結果は得られなかった。また,運動部の生徒は反社会的傾向が高いことが明らかになった。対人関係領域が心理社会的適応に与える影響については,「クラスへの意識」「他学年との関係」に関しては部活動の参加状況によって影響の仕方に違いがなかったが,「友人関係」「教師との関係」について違いがみられた。これらの知見をもとに,学校生活における部活動のポジティブ・ネガティブな面について議論がなされた。
著者
伊藤 大幸 浜田 恵 村山 恭朗 髙柳 伸哉 野村 和代 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.451-465, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
37

クラスサイズ(学級の人数)が学業成績および情緒的・行動的問題に及ぼす影響について,要因の交絡とデータの階層性という2つの方法論的問題に対処した上で検証した。第1に,学年ごとの人数によってのみクラスサイズが決定されている学校を調査対象とする自然実験デザインにより,学校の裁量に起因する要因の交絡や逆方向の影響の発生を防いだ。第2に,マルチレベルモデルの一種である交差分類(cross-classified)モデルを用いて,データの特殊な階層性を適切にモデル化した。第3に,学校内中心化によって学校間変動を除外することで,クラスサイズの純粋な学校内効果を検証するとともに,学校規模との交絡を回避した。9回の縦断調査で得られた小学4年生から中学3年生のデータ(11,702名,のべ45,694名,1,308クラス)に基づく分析の結果,クラスサイズの拡大は,(a)学業成績を低下させること,(b)教師からのサポートを減少させること,(c)友人からのサポートや向社会的行動の減少をもたらすこと,(d)抑うつを高めることが示された。こうした影響の広さから,クラスサイズは学級運営上,重大な意味を持つ変数であることが示された。
著者
波田野 結花 吉田 弘道 岡田 謙介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.151-161, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 or 0

これまでの心理学データ分析では, 概して統計的仮説検定の結果は報告されるが, 効果量の報告や議論は軽視されがちであった。しかし近年の統計改革の中で, 効果量を活用することの重要性が再認識されている。そこで本研究では, 過去4年間に 『教育心理学研究』誌に掲載された論文中で報告された仮説検定について, 論文中の情報から対応する効果量の値を算出し, 検定におけるp値と効果量との間の関係を網羅的に調べた。分析対象は, 独立な2群のt検定, 対応のある2群のt検定, 1要因および2要因の被験者間分散分析におけるF検定であった。分析の結果, いずれの場合においても報告されたp値と効果量の相関係数は-0.6~-0.4であり, 両者の間には大まかな対応関係が見られた。一方で, 検定結果が有意であるにもかかわらず小さな効果量しか得られていない研究も決して少なくないことが確認された。こうした研究は概ね標本サイズが大きいため, 仮説検定の枠組みの中では検定力分析の必要性が考えられる。また仮説検定の枠組みに留まらず, メタ分析によって関心下の変数ごとに効果量の知見を蓄積することや, ベイズ統計学に基づく新たな方法論などが今後の方向性として考えられる。
著者
榊原 彩子
出版者
日本教育心理学協会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.92-101, 1996
被引用文献数
1 or 0

According to previous theories, effects of repeated exposure of music on pleasingness depend on uncertainty of the music. In this study, "redundancy of rhythm pattern" and "prototypicality of harmony" were manipulated as the factors of uncertainty. The purpose of the following study is to examine effects of repeated exposure on pleasingness determined by the two above mentioned factors. Subjects heard tone sequences that represented four levels of redundancy and four levels of prototypicality, and rated them on 7-point scales of "complexity" and "pleasingness". Pleasingness was shown to be an inverted U-function of redundancy and prototypicality. And then, each tone sequence was repeated and rated pleasingness after each repetition. In a case of sequence whose redundancy caused most pleasingness before repetition, pleasingness of that sequence was decreased by repetition. But, in a case of sequence whose redundancy was too low to cause pleasingness before repetition, pleasingness was seen increased by repetition. On the other hand, pleasingness determined by prototypicality was not affected by repetition, and kept initial pleasingness during repetition.
著者
石田 英子 小笠原 春彦 藤永 保
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.270-278, 1991-09-30

The purpose of this study was to clarify (1) people's concept of intelligence in the following six cultures : Japan, Korea, China, Taiwan, Canada and Mexico ; and (2) the difference between the three following Japanese concepts : 'atamanoyoi', 'rikouna', 'kashikoi', which express "intelligent" in Japanese. The results were as follows : 1)Five-factor solution was found to be valid. They were named "sympathy and sociability", "inter-personal competence", "ability to comprehend and process knowledge", "accurate and quick decision making", and "ability to express oneself" ; 2)The factorstructures of Japan, Korea, China and Taiwan were similar to each other, but dissimilar to those of Canada and Mexico ; 3)The patterns of the correlations among the five factors were rather similar, while the variances of the factors were different between the nations concerned ; 4)The concept of 'kashikoi' was different from that of 'atamanoyoi' in that 'kashikoi' implied sociability together with cognitive ability.
著者
櫻庭 隆浩 松井 豊 福富 護 成田 健一 上瀬 由美子 宇井 美代子 菊島 充子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.167-174, 2001-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
20

本研究は,『援助交際』を現代女子青年の性的逸脱行動として捉え,その背景要因を明らかにするものである。『援助交際』は,「金品と引き換えに, 一連の性的行動を行うこと」と定義された。首都圏の女子高校生600人を無作為抽出し, 質問紙調査を行った。『援助交際』への態度 (経験・抵抗感) に基づいて, 回答者を3群 (経験群・弱抵抗群・強抵抗群) に分類した。各群の特徴の比較し,『援助交際』に対する態度を規定している要因について検討したところ, 次のような結果が得られた。1) 友人の『援助交際』経験を聞いたことのある回答者は,『援助交際』に対して, 寛容的な態度を取っていた。2)『援助交際』と非行には強い関連があった。3)『援助交際』経験者は, 他者からほめられたり, 他者より目立ちたいと思う傾向が強かった。本研究の結果より,『援助交際』を経験する者や,『援助交際』に対する抵抗感が弱い者の背景に, 従来, 性非行や性行動経験の早い者の背景として指摘されていた要因が, 共通して存在することが明らかとなった。さらに, 現代青年に特徴的とされる心性が,『援助交際』の態度に大きく関与し, 影響を与えていることが明らかとなった。
著者
織田 揮準
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.166-176, 1970-09-30
被引用文献数
14 or 0

This study is on the developmental changes in meanings of the Japanese qualitative and quantitative words (most of them are adverbs) by means of the paired-comparison method. The qualitative and quantitative words are classified on the basis of the following four categdries of meanings : (1) 18 words which express degree of common things (TEST I) ; sugoku, hljoni, taihen, totemo, kanari, etc. (2) 16 words which express degree of probability (TEST II) ; zettaini, kanarazu, kitto, tashikani, tabun, etc. (3) 16 words which express degree of frequency (TEST III) ; itsumo; yoku, tabitabi, tokidoki, mareni, etc. (4) 18 words which express degree of psychological time-distance (TEST IV) ; a. 10 words which express the future ; suguni, imani, mamonaku, yagate, etc. b: 9 words which express the past : toni, senkoku, sakihodo, ima, etc. The subjects are required to answer the following questions.
著者
原谷 達夫 松山 安雄 南 寛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-7, 1960-06-30

1.12の民族的国家的集団に対する大阪市在住学徒のステレオタイプが質問紙法によって求められ,各集団ごとに上位5特性を表示した。2.Katz & Bralyの手法により,中学生,高校生,大学生という標本群ごとにステレオタイプの一致度指数を求め,それぞれ.24,.28,.26という平均値を得た。3.民族的好悪感情の順位を測定した結果から,ステレオタイプを通して示された好意性との関連を考察した。とくに注意されたのは,日本人学生の自己帰属感における知的感情的両側面の不一致である。4.対照的な結果として朝鮮人に対するステレオタイプの非好意性と選択順位の低さとの合致が指摘され,検討が加えられた。5.われわれが得た成果を理論的に次の2点に集約してみた。i)本邦楽徒の一致度指数があまり高くない根拠としては,知的文化という面のほかに,民族的無関心という面が指摘されよう。ii)欧米的資本主義的先進国に対する日本人学徒の劣等感は,朝鮮人のステレオタイプ像へ投射される可能性があり,客観的理性にもとづく認識により偏見を克服する必要が感じられる。
著者
水品 江里子 麻柄 啓一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.573-583, 2007-12-30

日本文の「〜は」は主語として使われるだけではなく,提題(〜について言えば)としても用いられる。従って日本文の「〜は」は英文の主語と常に対応するわけではない。また,日本語の文では主語はしばしば省略される。両言語にはこのような違いがあるので,日本語の「〜は」をそのまま英文の主語として用いる誤りが生じる可能性が考えられる。研究1では,57名の中学生と114名の高校生に,例えば「昨日はバイトだった」の英作文としてYesterday was a part-time job.を,「一月は私の誕生日です」の英作文としてJanuary is my birthday.を,「シャツはすべてクリーニング屋に出します」の英作文としてAll my shirts bring to the laundry.を提示して正誤判断を求めた。その結果40%〜80%の者がこのような英文を「正しい」と判断した。これは英文の主語を把握する際に日本語の知識が干渉を及ぼしていることを示している。研究2では,日本語の「〜は」と英文の主語の違いを説明した解説文を作成し,それを用いて高校生89名に授業を行った。授業後には上記のような誤答はなくなった。
著者
植阪 友理
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.80-94, 2010-03-30

自己学習力の育成には,学習方略の指導が有効である。中でも,複数の教科で利用できる教科横断的な方略は,指導した教科以外でも活用できるため有用である。指導された学習方略を他の教科や内容の学習に生かすことは「方略の転移」と呼べる。しかし,方略の転移については,従来,ほとんど検討されてきていない。そこで本研究では,方略の転移が生じた認知カウンセリングの事例を分析し,方略の転移が生じるプロセスを考察する。クライエントは中学2年生の女子である。非認知主義的学習観が不適切な学習方法を引き起こし,学習成果が長期間にわたって得られないことから,学習意欲が低くなっていた。このクライエントに対して教訓帰納と呼ばれる学習方略を,数学を題材として指導し,さらに,本人の学習観を意識化させる働きかけを行った。学習方法の改善によって学習成果が実感できるようになると,非認知主義的学習観から認知主義的学習観へと変容が見られ,その後,数学の異なる単元や理科へ方略が転移したことが確認された。学習方略を規定する学習観が変容したことによって,教科間で方略が転移したと考えられた。また,学習者同士の教え合いが多いというクライエントの学習環境の特徴も影響したと考えられた。
著者
清水 健司 海塚 敏郎
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.54-64, 2002-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
26
被引用文献数
9 or 0

本研究は, 青年期における対人恐怖心性と自己愛傾向との関連について検討することを目的とした。大学生336名を対象として対人恐怖心性尺度と自己愛人格目録の質問紙を施行した。分析の結果, 対人恐怖心性と自己愛傾向には有意な負の相関が見られた。これは, いくつかの対人恐怖心性と自己愛傾向の関連のパターンが混在している状態であるという解釈可能性を示していた。また, クラスター分析を行った結果, 対人恐怖心性と自己愛傾向のパターンには4つサブタイプがあることが示された。これらは, 臨床的な知見を参考にすると第1クラスターは,「純粋な」対人恐怖であり, 第2クラスターは,「過敏型」自己愛人格であり, 第3クラスタ」は,「ふれ合い恐怖的心性」に類似したものと推測され, 第4クラスターは,「無関心型」自己愛人格であるとそれぞれ解釈された。このなかで第2クラスターと第4クラスターは, 対人恐怖心性が自己愛の影響を大きく受けていることが分かり, 自己愛の高まりが対人恐怖心性を増大させていることを示した。
著者
小塩 真司 岡田 涼 茂垣 まどか 並川 努 脇田 貴文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.273-282, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
34
被引用文献数
5 or 0

本研究では, 日本で測定されたRosenberg(1965)の自尊感情尺度の平均値に与える調査対象者の年齢段階や調査年の要因を検討するために, 時間横断的メタ分析を試みた。1980年から2013年までに日本で刊行された査読誌に掲載された論文のうち256研究を分析の対象とした。全サンプルサイズは48,927名であった。重回帰分析の結果, 調査対象者の年齢段階と調査年がともに, 自尊感情の平均値に影響を及ぼすことが明らかにされた。年齢段階に関しては, 大学生を基準として, 調査対象者が中高生であることが自尊感情の平均値を低下させ, 成人以降であることが自尊感情の平均値を上昇させていた。また調査年に関しては年齢層によって効果が異なっていた。中高生や成人においては最近の調査であるほど直線的に自尊感情の平均値が低下しており, 大学生では曲線的に変化し, 近年は低下していた。また件法が自尊感情得点の平均値に影響を及ぼすことも明らかにされた。
著者
小塩 真司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.261-270, 2002-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
33
被引用文献数
12 or 0

本論文の目的は理論的に指摘される2種類の自己愛を考慮した上で, 自己愛傾向の観点から青年を分類し, 対人関係と適応の観点から各群の特徴を明らかにすることであった。研究1では511名の青年 (平均年齢19.84歳) を対象に, 自己愛人格目録短縮版 (NPI-S), 対人恐怖尺度, 攻撃行動, 個人志向性・社会志向性, GHQを実施した。NPI-Sの下位尺度に対して主成分分析を行い, 自己愛傾向全体の高低を意味する第1主成分と,「注目・賞賛欲求」が優位であるか「自己主張性」が優位であるかを意味する第2主成分を得た。そして得られた2つの主成分得点の高低によって被調査者を4群に分類し, 各群の特徴を検討した。研究2では, 研究1の各被調査者のイメージを彼らの友人が評定した。384名を分析対象とし, 各群の特徴を検討した。2つの研究を通して, 自己愛傾向が全体的に高い群を, 理論的に指摘される2種類の自己愛に類似した特徴を示す2つの群に分類可能であることが示された。
著者
中山 留美子 中谷 素之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.188-198, 2006-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
52
被引用文献数
11 or 0

本研究では, 青年期における自己愛の発達的変化について,「2種類の自己愛」という枠組みを用い, 横断的方法により検討を行った。研究1では, 理論的に指摘される「2種類の自己愛」を測定する尺度を作成した。研究2では, この尺度を中学生から大学生までの青年1114人に対して実施した。下位尺度得点を用いて青年の自己愛を「誇大型」「過敏型」「混合型」「低自己愛群」の4下位型に分類し, 各下位型の生起率を学年ごとに算出して, これを比較した。その結果, 自己愛は全体として, 中学生から高校生にかけて高揚し, 高校3年生付近でピークを迎えることが示唆された。また, GHQ (精神的健康調査票) 得点との関連から, 下位型によって適応の高さに違いがあることが明らかになり, ここから, 青年期の自己愛が適応と関連していることが示唆された。
著者
相澤 直樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.215-224, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
2 or 0

本研究では, 誇大特性と過敏特性からなる自己愛的人格項目群を作成し, 自己愛的人格の構造を検討した。まず, 67項目からなる自己愛的人格項目群を作成し, YG性格検査の10下位尺度とともに一般の大学生・大学院生545名に実施した。得られたデータにプロマックス回転による因子分析を施したところ,“対人過敏”,“対人消極性”,“自己誇大感”,“自己萎縮感”,“賞賛願望”,“権威的操作”,“自己愛的憤怒”の7因子が抽出された。その後, これらの下位尺度について, 項目一総得点問相関とα係数を用いて内的一貫性を検討した。また, YG性格検査との関係を検討したところ, 各下位尺度の併存的妥当性が確かめられた。次に, 共分散構造分析を用いて自己愛的人格項目群の潜在変数に関するモデルを検討した。モデル1は, 2つの独立的な潜在因子が別々に誇大特性下位尺度と過敏特性下位尺度を規定するという仮説から構成された。モデル2は,“誇大自己”と“萎縮自己”の2つの自己イメージから“自己愛的傷つき易さ”が生じるという潜在因果関係により構成された。分析の結果, 両モデルにおいてすべてのパス係数は有意な値を示したが, 十分な適合度 (GFI) を示したのはモデル2のみであった。以上の結果について, 誇大特性と過敏特性を含む自己愛的人格を包括的にとらえる視点から考察を行った。
著者
松本 じゅん子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.23-32, 2002-03-31
被引用文献数
1 or 0

本研究では,大学生を対象に,悲しい時に聴く音楽の性質や,聴取前の悲しみの強さと音楽の感情的性格による悲しい気分への影響を調べた。予備調査の結果,悲しみが強い場合ほど,暗い音楽を聴く傾向が示され,悲しみが強い時に悲しい音楽を聴くと悲しみは低下するが,悲しみが弱い時に悲しい音楽を聴くと悲しみが高まる,または変化しないことが予測された。実験1,2の結果,音楽聴取後の悲しい気分は,音楽聴取前の悲しみの強さにかかわらず,聴いた音楽によって,ほぼ一定の強さに収束した。結果的に,非常に悲しい時に悲しい音楽を聴いた場合,音楽聴取後の悲しい気分は低下し,やや悲しい時には変化しないことが示唆された。つまり,悲しい音楽は,悲しみが弱い時には効果を及ぼさないが,非常に悲しい気分の時に聴くと悲しみを和らげる効果があり,状況によっては気分に有効に働くことが推察された。
著者
小塩 真司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.280-290, 1998-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
29
被引用文献数
24 or 0

本研究の目的は, 自己愛傾向と自尊感情との関わりを検討すること, そしてその両者が, 青年期における友人関係とどのように関連しているのかを検討することであった。自己愛人格目録 (NPI), 自尊感情尺度 (SE-1), 友人関係尺度が265名 (男子146名, 女子119名) に実施された。NPIの因子分析結果から, 「優越感. 有能感」「注目・賞賛欲求」「自己主張性」の3つの下位尺度が得られた。NPIとSE-1との相関から, 自己愛は全体として自尊感情と正の相関関係にあるが, 特に「注目・賞賛欲求」はSE-1と無相関であり, SE-1の下位尺度との関係から, 高い自己価値を持つ一方, 他者の評価に敏感であり, 社会的な不安を示すといった特徴を有していることが明らかとなった。これらの結果は, NPIの妥当性を示す1っの結果であると考えられた。また, 友人関係尺度の因子分析結果から, 友人関係の広さの次元と浅さの次元が見出され, その2つの次元によって友人関係のあり方が四類型された。この友人関係のあり方と NPI, SE-1との関係が分析された。結果より, 広い友人関係を自己報告することと自己愛傾向が, 深い友人関係を自己報告することと自尊感情とが関連していることが明らかとなった。このことから, 青年期の心理的特徴と友人関係のあり方とが密接に関連していることが示唆された。
著者
南風原 朝和 芝 祐順
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-265, 1987-09-30

Three probabilistic indices were proposed for interpreting major types of statistical results obtained in behavioral research:the probability of concordance as an index of correlation, and two versions of the probability of dominance being indices of mean difference in the case of randomized and paired data, respectively. Charts for finding confidence intervals for their population values were provided. The relationships of these indices with certain nonparametric statistics were also noted.
著者
伊藤 美奈子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.26-36, 2017-03-30 (Released:2017-04-21)
参考文献数
21

昨今, 深刻化・複雑化するいじめについて, 小学生(3,720人), 中学生(3,302人), 高校生(2,146人)に調査をおこなった。いじめの被害・加害経験を尋ねた結果より, いじめの加害役割と被害役割が固定したものではないことが明らかになった。また, いじめの被害者は自尊感情が低く情緒不安定な特徴を有するが, それに加害経験が加わるとより一層, 自尊感情(とくに人間関係における自己肯定感)は低くなることが示唆された。また, クラスメートをからかうことを「悪くない」「おもしろい」と認知するものの割合は, 年齢とともに多くなること, その傾向は, とくにいじめ加害経験を有するものに多いこともわかった。いじめによる不登校や希死念慮は, ネット上のいじめ・集団無視・金品たかりといういじめでとくに強く経験される。またこれらの辛さは, 加害経験がなくいじめ被害のみのものに強く, 仕返し願望は, いじめ加害経験者により強い。いじめを見たときの反応(注意する・誰かに相談する・傍観する)も, 発達段階による違いが見られた。さらに, そうしたいじめに対する反応の背景にも, いじめ加害経験や自尊感情の低さが関与していることがうかがえた。