- 著者
-
森口 次郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本総合健診医学会
- 雑誌
- 総合健診 (ISSN:13470086)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.3, pp.447-451, 2012
企業で行われる労働安全衛生法に基づく健康診断は、適正配置の実施など安全配慮義務を果たすことを第一の目的としている。産業医選任の法的義務がない50人未満規模の事業場など中小企業では産業医の関与が乏しいことが多く、その義務が果たされていないことがある。健診実施機関には、中小企業に対して就業措置要否の判断の際に参考となる資料の提出などの支援が期待され、当会では高負荷業務や危険業務に対する就業制限検討の助言を提供することを検討している。<br> 健康診断後の保健指導や受診勧奨は健診を有益なものとする。健診実施機関は、指導スタッフの確保および資質向上に努めることが望まれ、当会においては特定保健指導担当スタッフに対して産業医大産業医実務研修センターと連携して品質管理の取り組みを実践し、一定の成果をあげている。<br> 企業でがん検診を行う場合、集団対策型と考えられるため、エビデンスレベルの高い検診(大腸、胃、子宮頸部、乳房、肺)を中心とすべきである。がん検診などとして実施する法定外の検査については社内の衛生委員会で目的や情報の保管・利用などについて協議し、包括的同意を得た上で行うべきであるため、このような課題に対しても企業健診の実施機関には適切に助言が出来るスタッフが在籍することが望ましい。また上記のエビデンスレベルの高いがん検診の受診率は総じてまだ低率であり、特に女性特有のがんの受診率向上のためにさらなる取り組みが必要と考える。