著者
菅沼 慎一郎
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.265-276, 2013
被引用文献数
1

「諦める」は多くの人が日常的に体験することであるが, 心理学における一貫した定義はこれまでなく, その否定的側面が報告されることが多かった。本研究の目的は, 青年期における「諦める」の構造を明らかにし, 仮説的に定義すると共に, 「諦める」ことの精神的健康に対する機能に関する示唆を得ることである。後青年期(22~30歳)の男女15名を対象に, 過去の諦め体験に関して半構造化面接を行い, 29エピソードを得た。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果, 11の概念と3つのカテゴリーが生成された。青年期における「諦める」は, 達成・実現を目指して努力してきた<諦めた内容>に関して, 目標の達成・実現困難度の認識という<諦めたきっかけ>を契機に, 目標や望みの放棄という<諦め方>に至る。これに基づき, 「諦める」は, 「自らの目標の達成もしくは望みの実現が困難であるとの認識をきっかけとし, その目標や望みを放棄すること」と定義された。「諦める」は否定的な側面のみならず, 建設的な側面を有しており, そこに「諦める」という概念の独自性があること, 精神的健康に対して多様な機能を有することが示唆された。

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