著者
中林 一朗 増田 精造 安村 二郎
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.344-347, 1969
被引用文献数
2

アルミニウムおよびニッケルの交互の蒸着によって調製したサンドイッチ型ラネー合金膜,およびこれを水酸化ナトリウム水溶液で展開したラネーニッケル膜について表面組織を金属反射顕微鏡で観察した。またユッケルーアルミニウム合金の組成,ラネーニッケル膜の表面構造をX線回折で解析した。これらの観察および解析結果からラネーニッケル膜の水素化触媒活性と表面構造との関陣性について研究した。ニッケルーアルミニウムの合金は約450℃より高温の熱処理で蒸着膜中に生成しはじめ,金属間化合物としてNiAlaとNi2A13の2種が見いだされるがNiAlは存在しない。種々の熱処理温度において,生成した合金膜を水酸化ナトリウム水溶液で展開しaアセトンの水素付加反応によって触媒活性を調べると,合金生成温度約450。Cの試料から触媒活性を呈しはじめ,約550℃のものが最高活性を示した。これらのラネーニッケル触媒表面の組織は網目状構造を示し,金属間化合物中のアルミニウムは展開時に完全には溶出せず,一部残存する。またこれらのラネーニッケル膜にふたたび熱処理を加えた場合,150~200℃において,触媒活性は急激に低下する。X線回折図によれば,表面構造は同様の条件で熱処理を行なった純ニッケル蒸着膜より乱れが大きく,とくに(200)面の乱れがいちじるしい。また高温で処理したものほどニッケル格子のひずみ,すなわち格子不整がよりよく消失する。以上の事実から,ラネーニッケル触媒の活性と格子不整との間には密接な対応関係が存在すると推論される。

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