著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.281-284, 2000
被引用文献数
1

北海道各地の森林5地域(苫小牧,富良野,旭川,新得,上士幌)で,7年聞または4~20年間隔でエゾライチョウの生息状況を調査した,生息数(調査路の長さに対する出現個体数で示す)は1960年代後半と1970年代前半から1990年代初めにかけて減少し,1990年代になっても減少傾向は続いているか,または低密度のままである.このほか,エゾライチョウの出現頻度は,苫小牧のウトナイ湖周辺のハンノキ林では1980年代から1990年代にかけ,江別の野幌森林公園では1970年代から1980年代にかけて減少した.北海道では1973年以来森林で大面積の皆伐•造林は行なわれておらず,エゾライチョウの生息に不適なカラマツ人工林の面積はほどんど変化していない.また北海道大学苫小牧演習林,新得山,野幌森林公園のような鳥獣保護区でも生息数または出現頻度が減少している.これらのことから,森林施業や狩猟が生息数減少の主要な原因とは考えられない.1960年代末から北海道におけるウシの飼育頭数が増加し,それに伴って農耕地で主に畜産廃棄物に依存して生活するキツネが1970年代前半から増加し,森林内でもキツネの生息数が多くなってきた.また,狩猟と有害鳥獣駆除によりシカの捕獲数は1980年代の10,000頭から1990年代後半の50,000頭に増加した.捕獲されたシカは,良質の肉や角のある頭部をとられたあと,捕獲場所に放置され,それが冬の間キツネの食物となり,キツネの増加に拍車をかけている.この時期はエゾライチョウが減少した時期と一致しており,キツネの増加がエゾライチョウ減少の主な原因となっている可能性が強い.

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