著者
北澄 忠雄 貞包 典子 嶋田 和幸 小沢 利男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-12, 1985
被引用文献数
1

自律神経機能検査ならびに血漿ノルエピネフリン (以下PNE), リンパ球β受容体の測定を行ない, 交感神経と副交感神経による循環調節機能に及ぼす加齢と高血圧の影響を検討した. 対象は正常血圧者 (140/80mmHg以下) 54名 (14~77歳) と本態性高血圧 (160/95mmHg以上) 36名 (40~78歳) である. 方法は Valsalva 試験, 70度起立試験, 寒冷昇圧試験, アトロピン (0.02mg/kg) 静注負荷試験を行ない, PNEと血漿レニン活性 (PRA) を測定した. 自律神経機能の評価は Valsalva 試験は第II相および第IV相における収縮期血圧に対する心拍数の回帰係数 (Baroreflex Sensitivity Index, BRSI), 起立試験は起立時心拍数, 血圧, PNEとPRAの変化, 寒冷昇圧試験とアトロピン負荷試験は心拍数と血圧の変化を観察した. β受容体はリンパ球を分離し<sup>125</sup>Iodocyanopindolol と結合させ結合容量と結合親和性を測定した.<br>結果: 1) Valsalva 試験での第II相及び第IV相のBRSIは加齢と共に低下し (p<0.01), 高血圧群 (H群) は正常血圧群 (N群) に比べ第II相で有意に低下した (p<0.05). 2) 起立時の血圧低下度は加齢の影響が少ないが, 心拍数増加度 (ΔHR) は若年群に比し中老年群で有意に低かった. 安静時PNEは加齢に伴ない上昇した (r=0.315, p<0.05). ΔHRとPNEの増加度 (ΔPNE) との間に有意の相関があり, ΔHR/ΔPNEの値は加齢に伴って低下した (r=0.498, p<0.01). H群でも同様の傾向がみられた. (p<0.05). PRAの起立時の変化は加齢と共に低下した (p<0.001) がH群では有意でなかった. 3) 寒冷昇圧試験における心拍数増加は加齢により抑制された. 4) アトロピン負荷試験では加齢に伴ない心拍数の増加が低下した. 5) リンパ球β受容体結合容量と結合親和性は共に加齢の影響がなかった. 以上加齢と高血圧の影響で交感神経と副交感神経による循環調節機能の低下が認められ, 特に心拍数に関係した副交感神経機能の障害が顕著であった. β受容体結合能の成績から受容体以後の障害や心血管系の構築変化による機能不全も大きい役割を担っているものと考えられる.

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