著者
岩田 健太郎
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.447-450, 2011 (Released:2012-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

高齢者における感染症診断の原則は,通常の感染症診断の原則となんら変わることはない.それは,感染臓器の特定,原因微生物の同定,そして患者の重症度の見積もりの3点である.とはいえ,高齢者特有の診断にまつわる問題は存在する.尿路感染症や肺炎などコモンな感染症の症状は若年者に比べるとはっきりしない.発熱を伴わない感染症も少なくない.不要な検査で感染症の「レッテル」を貼ってしまうことは厳に慎みたい.患者のアウトカムに関係しない微生物探しは,患者やその周辺の利益にはつながらない.
著者
留畑 寿美江
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.767-774, 2012 (Released:2013-07-24)
参考文献数
20

目的:本研究は,尿排泄機能に与える加齢の影響を調べるために,膀胱容量,排尿量,平均尿流率ならびに残尿量を用いて若年女性と高齢女性の自然な排尿状態下における蓄尿および排尿機能を比較した.方法:排尿機能障害のない高齢女性6名(平均年齢64歳)及び若年女性12名(平均年齢22歳)を対象とした.飲水(500~700 ml)後にみられる尿意出現時の膀胱容量,排尿量,尿排出時間,平均尿流率および残尿量を測定した.各項目について,初発尿意時と最大尿意時に分けて実験を2回実施した.膀胱容量を超音波測定機器を用いて非侵襲的に測定した.平均尿流率は排尿量/尿排出時間の式から求めた.残尿量は膀胱容量から排尿量を引いた値として算出した.結果:最大尿意時における若年女性群の膀胱容量は576 ml,高齢女性群の膀胱容量は505 mlであり,両群間で有意な差はなかった.若年女性群の排尿量556 mlは高齢女性群418 mlに対し有意に多く,逆に高齢女性群の残尿量88 mlは若年女性群34 mlよりも有意に多かった.最大尿意時において,若年女性群と高齢女性群は同等の平均尿流率(16 ml/s)を示したにも関わらず,高齢女性群において排尿量は少なく残尿量が多かった.若年女性群では膀胱容量に比例して尿排出時間は延長したが,高齢女性群では膀胱容量に関わらず尿排出時間が変化しなかった.高齢女性群では尿排出時間は延長されないため,膀胱に貯留した尿を排出しきれなかった.結論:高齢女性において蓄尿機能ならびに尿排出速度は若年女性と同様に維持されているが,膀胱収縮は膀胱容量に比例して持続しないため膀胱に貯留した尿を排出しきれず残尿が多いと考えられる.
著者
三浦 宏子 苅安 誠
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.627-633, 2007 (Released:2007-11-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

目的:虚弱高齢者の服薬状況についての報告は少なく,嚥下機能の低下と服薬との直接な関連性については十分に明らかになっていない.そこで,本研究では,虚弱高齢者に対して服薬模擬調査を行い,大きさの異なる各錠剤の服用時において,嚥下機能の低下が服薬行動に与える影響を調べた.併せて,錠剤サイズと取り扱い作業時間との関連性についても調べた.方法:被験者は,虚弱高齢者73名である.この被験者に対して,ADL20を用いた日常生活機能評価,反復唾液嚥下テスト(RSST)を用いた嚥下機能評価,ならびに服薬模擬場面を設定した実地調査を実施した.実地調査においては,直径が異なる5種のサンプル錠(6mm,7mm,8mm,9mm,10mm)を用いて,錠剤を口に含む手前までの動作を被験者にしてもらい,その際の飲み込みやすさと取り扱い性について主観的評価を行うとともに,取り扱い作業時間を計測した.結果:嚥下機能低下群と正常群において,各錠剤サイズ3錠のサンプル錠を用いて,服薬動作の比較を行ったところ,10mm以外の錠剤サイズにおいて,嚥下機能と服薬分割回数の間に有意な関連性が認められ(p<0.05),低下群では錠剤を複数回に分けて服用する傾向がみられた.また,すべての錠剤サイズにおいて,ADLと模擬動作における錠剤の取り扱いに要した時間との間に有意な関連性が認められた(p<0.01).次に,飲み込みやすさと取り扱い性の両者を考慮して,最も処方薬として至適であると感じた錠剤サイズとして7mmを選択した者が30.1%,8mmを選択した者が28.8%であった.また,最も好ましくないと感じた錠剤サイズとして,10mmを選択した者が61.6%,6mmを選択した者が28.8%であった.結論:虚弱高齢者の嚥下機能とADLの低下は,服薬行動と密接な関連性を示した.また,虚弱高齢者の服薬に適した錠剤サイズは7∼8mmであることが示唆された.
著者
橋田 英俊 本田 俊雄 森本 尚孝 相原 泰
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.700-703, 2001-09-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

75歳の男性が見当識障害, 構語障害, 歩行障害の増悪を来して入院した. 患者は4年前に頸椎症と診断され治療を受けていたが, 四肢の運動障害及びしびれ感は徐々に増悪していた. みかけ上の血清Cl値の上昇が端緒となり, ブロム中毒が疑われた. 10年来のブロムワレリル尿素含有鎮痛薬の内服歴及び血清ブロム濃度上昇を認めたため, ブロム中毒と診断された. 輸液により症状は軽減したが, 四肢の運動障害は残存した. 四肢の運動障害は頸椎症に加え慢性ブロム中毒による不可逆性の障害も関与している可能性が否定できない. 高齢者の精神・神経症状は, 老人性痴呆や加齢による影響と判断され積極的な診断や治療が見送られることが多い. ブロムワレリル尿素は市販の鎮痛薬等にも含まれている成分であり, 高齢者で精神・神経症状を呈した症例に対しては, ブロム中毒を念頭におく必要がある.
著者
野木森 智江美 山本 寛 野中 敬介 佐塚 まなみ 濱谷 広頌 山田 浩和
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.555-559, 2017-10-25 (Released:2017-12-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は82歳男性である.X年3月に左下葉肺炎で入院となった.抗菌薬治療中に,右肺上葉の結節影を指摘され当科紹介受診となった.同年4月に気管支鏡検査を施行し,病理組織診断で非角化型扁平上皮癌と診断した.精査の結果,cT1bN3M1b,StageIVとなり抗癌剤投与を検討したが,高齢であることや,経過中緩徐に進行する汎血球減少を来したことから骨髄異形成症候群が疑われ,抗癌剤治療は困難と判断し外来で経過観察とした.しかしながら,同年7月のCTで右肺上葉の結節影の縮小を認め,X+1年8月に施行した全身検索でも結節は縮小していた.FDG-PET上,リンパ節や副腎の集積も著明に低下しており,全身性に癌が自然退縮したと考えられた.
著者
居川 幸正 松原 泉
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.536-541, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
15

目的:長期入院胃瘻造設後患者を対象に生存時間分析を行うことで,胃瘻造設時年齢が生命予後に与える影響を明らかにする.方法:対象者は2005年12月から2012年3月までの間に当院に入院していた胃瘻造設後の患者478名のうち,最終的な転帰を調査できた408名.胃瘻造設後の患者は日常の看護,介護の一環として口腔ケアを施行された.胃瘻造設時の年齢によって対象を4群に分割し,60~69歳を60歳代群,70~79歳を70歳代群,80~89歳を80歳代群,90~99歳を90歳代群とした.Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を描出し,log-rank検定とCoxの比例ハザードモデルで統計学的解析を行った.結果:全対象者の1年生存率は75.4%,5年生存率は23.2%,生存中央値は32.2カ月であった.女性の生存率が有意に男性よりも優れていた(p=0.0014).80歳代群と90歳代群は60歳代群と比較して有意に生存率が低かった(p<0.008).しかし,70歳代群,80歳代群および90歳代群の3群間の生存率はほぼ同様の傾向を示し,log-rank検定で有意差は検出されなかった.女性に対する男性の年齢調整死亡ハザード比は1.748(95%信頼区間,1.364~2.242),60歳代での胃瘻造設の死亡ハザードを1としたとき,80歳代および90歳代での造設による性別調整ハザード比は,順に2.173(95%信頼区間,1.341~3.521),3.071(95%信頼区間,1.627~5.797)であった.結論:今回の研究結果は,既報告に比べて全体的に生存率が高く,日常的な口腔ケアが胃瘻造設後の生命予後を向上させ得ることを示した.80歳以上での胃瘻造設は60歳代での造設に比べて有意に死亡リスクが高く,80歳以上の高齢になるほど,胃瘻造設の適応に慎重さが求められることを示唆している.
著者
新井 康通 広瀬 信義 川村 昌嗣 本間 聡起 長谷川 浩 石田 浩之 小薗 康範 清水 健一郎 中村 芳郎 阪本 琢也 多田 紀夫 本間 昭
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.202-208, 1997-03-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

東京都在住の百寿者45名 (男15例, 女30例, 平均年齢101.1±1.4歳, mean±SD, 以下同じ) の血清脂質値, アポ蛋白A1 (以下アポA1と略す), アポ蛋白B (以下アポBと略す), リポ蛋白分画, 低比重リポ蛋白 (以下LDLと略す) 分画の被酸化能を測定し, 健常な若年対照群と比較検討した.百寿者では対照群に比べ, 総コレステロール (以下TCと略す), 高比重リポ蛋白コレステロール (以下HDL-Cと略す), アポA1, アポBが有意に低値を示した. アポBが60mg/dl以下の低アポB血症の頻度は対照群の2.3%に対し, 百寿者では23%と有意に高かった. 各リポ蛋白分画中のコレステロール濃度は超低比重リポ蛋白コレステロール (以下VLDL-Cと略す), LDL-C, HDL-C, のいずれにおいても百寿者で有意に低かった. HDLの亜分画を比べると百寿者で低下していたのはHDL3-Cであり, 抗動脈硬化作用を持つHDL2-Cは両群で差がなく, 百寿者の脂質分画中に占めるHDL2-Cの割合は有意に増加していた. LDLの被酸化能の指標である lag time には有意差を認めなかった (百寿者44.7分±31.8対対照群49.9±26.0分). 百寿者を日常生活動度 (以下ADLと略す) の良好な群と低下している群に分け, 脂質パラメータを比較したところ, ADLが良好な群でHDL3-Cが有意に高値を示していた. 認知機能を Clinical Dementia Rating (以下CDRと略す) によって正常から重度痴呆まで5段階に評価し, 各群の脂質パラメータを比較したところ, 中等度以上の痴呆群でHDL-Cが正常群に比べ有意に低下していた.百寿者はアポBが低く, HDL2-Cが比較的高値であり, 遺伝的に動脈硬化を促進しにくい脂質組成を示すことが明らかとなった.
著者
岡村 菊夫 鷲見 幸彦 遠藤 英俊 徳田 治彦 志賀 幸夫 三浦 久幸 野尻 佳克
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.557-563, 2005-09-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
33
被引用文献数
4 5

目的: 水分を多く摂取することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか否か, これまでの報告を系統的にレビューする. 方法: PubMed 上で dehydration, hydration, water intake, fluid intake, cerebral infarction, cerebrovascular disease, apoplexy, myocardial infarction, angina pectoris, ischemic heart disease, blood viscosity, hemorheology を組み合わせた条件で文献検索し, 6名が論文を評価, 取捨選択した. 結果: 検索された611論文のうち22論文を選択した. 前向き無作為化試験が1つ, 前向きの非無作為化試験が4つ, コホート研究あるいは症例対照研究が8つ, 後ろ向きの記述研究が9つ存在し, 以下の点が明らかとなった. 脱水は血液粘稠度を上昇させ, 脳梗塞や心筋梗塞を惹起する原因の一つである. 血液粘稠度上昇には, 脱水以外にも重要な複数の要因が関連する. 夜間の水分補給は血液粘稠度を下げるが, 脳梗塞を予防するという証拠はない. コップ5杯以上の水を飲む人は, 2杯以下しか飲まない人より心筋梗塞の発症が低いとする報告が1つ存在した. 結論: 脳梗塞や心筋梗塞の主な原因は動脈硬化, 動脈硬化性粥腫であり, 予防には生活習慣の是正が根本的に重要である. 水分を多く摂取すると脳梗塞を予防するという直接的な証拠はなかった. 水分摂取と脳梗塞・心筋梗塞の頻度に関してはさらなる研究が必要であり, 高齢者のQoLを向上させる適切な水分摂取法を検討していく必要がある.
著者
葛谷 雅文 長谷川 潤 榎 裕美 井澤 幸子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.170-176, 2015-04-25 (Released:2015-05-19)
参考文献数
9
被引用文献数
2

目的:要介護認定を受け,在宅療養中の高齢者のコホートを利用し,栄養摂取方法ならびに食形態をサーベイし,その背景の比較を行うと同時に,3年間の縦断調査により,生命予後,入院への関連につき検討した.方法:名古屋市在住の高齢者を対象にした前向きコホート縦断研究(The Nagoya Longitudinal Study of Frail Elderly;NLS-FE)の参加者のうち,食事摂取状況が把握できた1,872名(平均年齢:80.6±7.7(SD)歳,男性:33.8%)を解析対象とした.研究開始時の基本的ADL,要介護度,併存症(Charlson Comorbidity Index)などの患者背景ならびに栄養摂取方法ならびに食形態を調査し,さらに3年間前向きに種々のイベントに関して縦断的調査を実施した.結果:登録時に経口摂取が可能な対象者は1,786名で,食事内容は普通食1,487名(79.5%),それ以外の経口摂取(介護食)299名(全粥食,ミキサー食など)であった.経管栄養使用者は82名(4.4%),静脈栄養は4名(0.2%)であった.介護食使用者では明らかに普通食摂取者に比較し要介護度が高く,経管栄養使用者ではさらに要介護度が高く,要介護5と認定されている対象者が84.1%にも及んだ.普通食に比較し,介護食,経管栄養利用者の順にADLは低下し,認知症,脳血管障害の有病率は増加した.3年間の観察期間に1,872名中453名(24.2%)が死亡し,798名(42.6%)が少なくとも一度の入院を経験していた.肺炎が主な死因であったのは103名(5.5%)で,肺炎により入院したのは155名(8.3%)であった.Cox比例ハザードモデルでは普通食摂取に比較し,ADLを除く調整では介護食,経管栄養使用者では死亡,入院リスクが有意に高値であったが,ADLを調整因子に加えるとその有意な関係は消失した.一方肺炎による死亡ならびに入院リスクに関してはADLを調整因子として投入しても,介護食,経管栄養使用者では有意なリスク(入院は経管栄養のみ)となっていた.結論:介護食,経管栄養利用者は肺炎死亡のリスクが高いことが明らかとなり,日ごろから適切な食事介助,口腔ケアなどの予防が重要である.
著者
谷本 芳美 渡辺 美鈴 河野 令 広田 千賀 高崎 恭輔 河野 公一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.52-57, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
10 18 12

目的:高齢者の介護予防に向けた健康づくりを支援するために,日本人を対象とした大サンプル数の調査から筋肉量を測定し,部位別に筋肉量の加齢による特徴を明らかにすることを目的とした.方法:18歳以上の日本人4,003人(男性1,702人,女性2,301人)を対象者とし,平成19年5月から平成20年9月にかけて上肢,下肢,体幹部および全身筋肉量の測定を行った.対象者は大都市近郊や農村在住の住民,大学の学生や教職員,民間企業の職員,地域の既存施設(図書館,老人福祉センターなど)の利用者である.マルチ周波数体組成計MC-190(タニタ社)を使用して筋肉量を測定し,性,年齢別に検討した.結果:筋肉量はすべての部位において年齢に関わらず男性が女性よりも有意に多く,また,加齢に伴う減少の割合は男性の方が女性よりも大きいことを示した.部位別の特徴として,下肢は20歳代ごろより加齢に伴い著明な減少を,上肢は高齢期より緩やかな減少を,体幹部は中年期頃まで緩やかに上昇した後減少を示した.さらにこれらの総和である全身筋肉量は中年期頃まで微量に増加あるいは横ばい状態から減少した.このように筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは下肢で,次に全身,上肢,体幹部の順であった.結論:本研究では日本人筋肉量の部位別の加齢変化が明らかとなった.特に下肢筋肉量は早期より加齢に伴い大きく減少することから,高齢期の健康づくりにおいて下肢筋肉量に注目した支援の必要性が示された.
著者
松村 拓郎 三谷 有司 沖 侑大郎 藤本 由香里 石川 朗
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.364-368, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 2

目的:肺炎は脳血管障害患者に好発する合併症の1つであり,その発生機序の多くが誤嚥性肺炎である.誤嚥性肺炎は口腔内細菌叢の誤嚥による侵襲と咳嗽反射や免疫能などの宿主の抵抗反応のバランスの崩壊によって発症するとされる.しかし,現在までの報告の多くが誤嚥や嚥下障害に着目したものであり,宿主抵抗に関する報告は乏しい.本研究では,嚥下障害を有する脳血管障害患者のみを対象として,誤嚥性肺炎発症における宿主抵抗の重要性について検討した.方法:脳梗塞または脳出血の診断を受け,回復期リハビリテーション施設4病院に新規入院した175名のうち,入院時点で嚥下障害を有していた76名(平均年齢74.7±8.4歳,男性29名)を対象とした.対象者を入院期間中の肺炎発症の有無により2群に分類し,2群間で入院時の特徴を後方視的に比較・検討した.結果:入院期間中に肺炎を発症したのは10名(13.2%)であり,そのすべてが65歳以上の高齢者であった.2群間の比較では性別,活動レベル,血清アルブミン,食事形態,嚥下障害重症度の項目で有意差がみとめられた(p<0.05).結論:本研究から嚥下障害を有する脳血管障害の肺炎発症要因として女性,臥床,低栄養状態,経管栄養,重度嚥下障害の存在が挙げられた.誤嚥性肺炎発症は嚥下障害と非常に密接に関係している一方で,臥床や低栄養状態などの宿主抵抗も重要な関連因子であることが示された.
著者
山田 実
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.217-226, 2019-07-25 (Released:2019-07-31)
参考文献数
38

2017年,サルコペニア診療ガイドラインが発刊された.ここでは,サルコペニアの定義・診断,疫学,予防,治療という項目でまとめられており,現時点でのサルコペニア診療に必要な情報が掲載されている.日々の臨床場面でサルコペニアを診る際には,まず,アジアのサルコペニアワーキンググループで定めた基準を使用すること,サルコペニアの治療には運動および栄養介入が推奨されている.なお,サルコペニアは各種疾病に併存することが多いことから,このような推奨を踏まえた上で個々の症例に対応することが求められる.
著者
齊藤 昇
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.263-270, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
27
被引用文献数
4 3

目的:高齢入院患者は慢性便秘症を伴い勝ちで,緩下剤として酸化マグネシウム(MgO)が処方される機会も多く,また腎機能障害例も少なくない.MgO服用により血清マグネシウム(Mg)は増加傾向で,この時腎機能低下があれば血清Mgはさらに増加する.平成20年にMgO服用による副作用が問題となった.そこで高齢入院患者でMgO 1日0.5~3 gの使用が血清Mgにどう影響するかを腎機能と関連させて調べた.方法:高齢入院患者延べ1,282例(男505,女777),平均79.6歳が対象であった.早朝空腹時に採血し,血清Mgをキシリジルブルー法により測定した.推算糸球体ろ過量(estimated glomerular filtration rate,eGFR)が計算された.このeGFR(ml /min/1.73 m2)により症例を5群に分け,eGFR 30未満(第1群),30以上,60未満(第2群),60以上,90未満(第3群),90以上,130未満(第4群),130以上(第5群)とした.4群で分ける場合には第1~3群は上記と同じで,90以上をまとめて第4群とした.1 入院患者をMgO無しの552例(男212,女340),平均79.5歳とMgO服用の272例(男115,女157),78歳に分け,それぞれeGFRにより5群にさらに分類した.これら各群につき血清Mgの分布を調べた.2 MgO無しとMgO服用とを比較した.男性ではMgO無しの22例,平均79.4歳とMgO服用の18例,79.2歳であり,女性ではそれぞれ39例,84.2歳と30例,82.4歳であった.3 4症例(男1,女3),平均86.8歳の経過を4~14カ月観察した.4 MgO無しの88例(男31,女57),平均81歳と,MgO 1日0.5~1.5 g服用の116例(男42,女74),80.3歳と,MgO 1日2~3 g服用の118例(男55,女63),78.5歳との3集団を比較した.5 血清Mg3.8 mg/dl 以上(基準値1.7~2.6 mg/dl)の症例でMgO無し7例(男2,女5),平均84.2歳とMgO服用16例(男7,女9),85.7歳とを比較した.結果:1 eGFRによる5群ではMgO服用例でMgO無しの例に比較し,第1群は第3~5群に比較し血清Mgはより高い値の分布をχ2で有意に示した.2 MgO無しの男性平均6.9カ月,女性6.4カ月の経過でeGFRは有意に低下し,血清Mgは有意に増加した.MgO服用の男性6.1カ月,女性10カ月ではeGFRは有意な変化でなかったが,血清Mgは有意に増加した.3 4症例ではeGFRが低下すれば血清Mgが高くなり,その逆もあった.4 eGFRによる4群すべてでMgO無しに比較しMgO服用で血清Mgは有意に高かった.MgO無しでは第1群で第3,4群に比較し血清Mgは有意に高かった.MgO服用量による比較では第1群のみで1日2~3 gは0.5~1.5 gよりも血清Mgは有意に高くなった.5 血清Mg3.8 mg/dl 以上の症例をMgO無しとMgO服用に分けると,血清Mgは両者でほぼ同じで,eGFRはMgO無しで有意に低かった.血清Mgの最高値はMgO無しで5.2 mg/dl,MgO服用で5.9 mg/dl であった.結論:入院患者についてMgO服用で血清Mgは増加し,またeGFRの低下は血清Mgを増加させた.特にeGFRが30 ml /min/1.73 m2未満(第1群)では血清Mgは高かった.