- 著者
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森川 直
- 出版者
- 教育哲学会
- 雑誌
- 教育哲学研究 (ISSN:03873153)
- 巻号頁・発行日
- vol.2004, no.89, pp.145-151, 2004
わが国のペスタロッチ研究史に新たな一ページが加えられた。本書は、学位論文「ペスタロッチ教育思想における宗教的基礎-その形成と展開」 (一九九九年十一月筑波大学) をもとに編まれたもので、著者の積年の研究の集大成とみなされるものである。「まえがき」で、著者は本書について次のように述べている。「本書は、従来もっぱら教育の近代化の先駆者として位置づけられてきたペスタロッチの教育思想と実践を改めて問い直し、ペスタロッチの教育思想と実践の根底には、一般的には『非合理的』、『非近代的』であると批判されがちであった宗教観が、それもきわめて根源的 (ラジカル) な、敬虔主義的で実践的な深い宗教観が、厳然と存在していることをまず論じている。そして、この宗教的基盤こそが、かれの人間観とそれにもとづく人間性尊重に徹する実践的教育思想を支えているということ、また、それゆえにこそ、かれの教育思想は、近代がもたらしたさまざまな負の遺産を克服し、あらたに人類に希望と勇気を与えうる教育を創造する基礎力をもつという意味での現代的意義をもつこと、などをさまざまな角度から論じている。」