著者
大原 英一
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.657-666, 1940
被引用文献数
2

既に報告した如く水蒸氣流に放電を施して之を液態酸素に浸けたトラツプに通じる時には水素原子と酸素分子との反應に酷似した幾多の現象を見た.本報に於てはGeib, Hart_??_k<sup>1)</sup>の行つた水素原子と酸素分子との實驗を繰返し,更に彼等の實驗以外の異りたる二三の實驗を試みて次の如き結果を得た.<br>1) 用ひる水素と酸素との容量比を約2:1とすれば,トラツプに得られる生成物を室温にまで温めるときには後に約68%の濃厚なる過酸化水素が殘り,此の際分解して發生する酸素の量は後に殘る過酸化水素の量に對して48cc/g H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>であり(即ち發生酸素と過酸化水素とのモル比は0.0728),水蒸氣放電の場合よりも著しく小である.<br>2) トラツプに於ける生成物が温まる際に分解し始める温度は約-117°Cにして,この温度は水蒸氣放電により得たる生成物が分解し始める温度-110°~〓115°C(第七報)と大體一致する.<br>3) 放出される酸素の分量は温め方の遲速には全く無關係に同一である.此の點も水蒸氣放電の場合と全く一致する.トラツプの温度上昇速度が同一である場合には(放出酸素-時間)-曲線は水蒸氣放電の場合と全く同一の型である.<br>4) 反應管の温度を-130°Cにする時には平均濃度11%の過酸化水素を得, Geib等の實驗と一致してゐる.<br>5) トラツプ内の過酸化水素生成の場所に水蒸氣を吹き付け共に凝固させると過酸化水素の生成量及び放出酸素の量を増加する.水蒸氣放電による場合にも同様の結果を生じる.<br>此等の實驗結果はGeib, Har_??_kの水素原子と酸素分子との低温反應と放電水蒸氣の低温反應との酷似を益々明瞭にする.故に大體に於て後者の反應も亦放電によつて水から水素原子と酸素分子とが生じ,之等が低温に於てGeib, Harte_??_kの反應を起すものであると推定する.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 無極環状放電による化學的研究:水蒸氣の放電(第八報)(大原 英一),1940 https://t.co/aJ6QdrwA2P

収集済み URL リスト