著者
高野 成子
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.16-26, 1982

本研究は, 若年者を対象とした主観的耐寒性 (Subjective tolerance to cold) と生理的対寒反応性 (Physiological response to cold) の簡易測定法を考案する目的でなされた。主観的耐寒性 (寒がりかどうか) は寒冷感感受性と防寒行動の面からの調査に基づいて評価された。調査項目は, 寒冷時の (1) 日中着衣量, (2) 就寝中の着衣・暖房量及びその選択理由, (3) 被験児の主観的耐寒性に対する保護者の判断からなり, それぞれの結果を3点法で評点化した。主観的耐寒性最大は9点最小は3点とした。<BR>生理的対寒反応性のうち代謝性対寒能 (Metabolic response to cold) は寒冷時の安静エネルギー代謝量 (RM) をもって, 断熱性対寒能 (Insu1ative response to cold) は寒冷血管反応テスト (5℃冷水中中指10分間浸漬) において, 寒冷血管拡張反応発現後の弛緩期血圧上昇度 (△DP) をもって表わした。生理的対寒反応性測定法が目的に適合しているかの判定は, RM及び△DPのそれぞれが主観的耐寒性 (これは大約寒冷暴露度を表わしている) との間で正の相関関係をなしていたかを検することによって行われた。この様な検討は8才の学童28名を対象にして行われた。<BR>各被験児について, 冬季における主観的耐寒性, RM, △DPを調べた。主観的耐寒性とRMの間にはr (相関係数) =0.45 (p<0.05) の, 又, 前者と△DPの間にはr=0.37 (P=0.05) の正の相関がみられた。本実験群のRMと△DPの平均値±SDはそれぞれ0.0742±0.0106 Cal・min<SUP>-1</SUP>・kg<SUP>-0.75</SUP>と2.1±3.2mmHgであった。この結果を基にして, RMと△DPの結果をそれぞれ代謝性及び断熱性対寒能の面から3段階に区分し, 評点化した。両対寒能の得点の総合点をもって, 生理的対寒反応性の指標とした。その最大は6点, 最小は2点である。主観的耐寒性と生理的対寒反応性の間には, r=0.58 (p<0.01) という他の2つのパラメーターとの間のそれらより高い正の相関がみられた。これらの結果から, 比較的簡単に測定されるRMと△DPをそれぞれ代謝性及び断熱性対寒能の指標となし, 寒冷適応実験に使用しうると判断された。又, 若年者に対する主観的耐寒性の調査法及びその結果の解釈について考察された。<BR>本研究に御協力下さいました金沢市立長町小学校の塩梅俊夫先生, 山本サヨ先生, 西田節子先生及び28人の児童の皆さん, 又, 測定に御助力下さいました北野久美さん, 木村いずみさん, 角順子さんに深謝の意を表します。本研究の一部は昭和55年度金沢大学教育学部特定研究「北陸における自然環境の総合研究」の経費によって行われた。

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