著者
永田 雄三
出版者
日本ウマ科学会
雑誌
日本中央競馬会競走馬保健研究所報告 (ISSN:03685543)
巻号頁・発行日
vol.1971, no.8, pp.91-99, 1971

競走馬用に作成した完全配合飼料を一定量摂取することによって得られるエネルギー量が,Medium Trainingに耐えられるものであるかどうかを血糖値の変動を尺度として検討した。 競走馬は牝の3才馬で育成期を終えたものを使用し,本実験期間中いわゆる競走調教法を実施した。また,実験の最初と中間と最後に日本における慣例的な競走馬の能力検査を行った。競走調教法には試作処方によるインタバルトレーニング法を採用した。血糖値の定量は,朝飼付後3時間目を運動前の安静値とし,その後運動開始し,そして運動後5分値と60分値を測定した。 摂取した可消化エネルギー量は約23,700Kca1,体重1kg当り52,6Kca1と算出された。実験期間1カ月の前半15日間に馬の体重は2.3~4.5%減少したが,その後15日間はほとんど体重の変動はなかった。 3回の能力検査の際の運動負荷においては,最終800mの全力疾走時間が60秒以上のときは,馬の血糖値は運動後二過性の上昇または下降をし,その増減の割合は運動前の30%以内であった。そして,60分後にはいつれもほぼ安静値に回復した。一方,一例だけ最終800mを56秒で走った馬は,運動後34 mg/100 mlまで血糖値が下がり,グルコースの組織内とりこみがかなり大きかったことをものがたっていた。しかしながら,このケースも60分後には安静値に回復したところから,馬の肝臓中にはかなりのグリコーゲが貯蔵されていたものと推定される。 インタバルトレーニングによる運動負荷の場合,血糖値の変動は能力検査の場合よりもやや大きく上昇または下降した。その増減の割合は運動前の値の70%以内であった。しかし,もっとも下ったのは48mg/100mlであった。能力検査の場合に比して,インタバルトレーニングを負荷したときの血糖値の変動は増減がかなり大きかったが,これは運動の強度が質的・量的にかなり異なり,強くそして複雑であったことによるものと推察される。いつれにせよ,運動後の血糖値の激減がみられなかったこと,また,60分後には安静値に近い値に回復していることから,インタバルトレーニングによる運動負荷量約6,800Kcalに対して・完全配合飼料8.5kg摂取による栄養は大体収支がつぐなわれていたと思われる。

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