- 著者
-
赤津 裕子
原田 悦子
- 出版者
- 一般社団法人 日本人間工学会
- 雑誌
- 人間工学 (ISSN:05494974)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.5, pp.268-278, 2008
- 被引用文献数
-
3
高齢社会の中, 機器デザインにおける高齢者対応が求められる一方, 定められた手順を操作するのではなく, ユーザが自由な目的・創意により人工物 (モノ) の持つ特性や可能性を探索しながら人工物を使用する「創発的使用 (emergent usage)」の重要性も認識され始めている. 本研究は, 単機能人工物 「Kapla (積み木)」を用いて, 創発的使用の存在の有無, ならびにその認知的加齢に伴う変化を検討するため, 高齢者と若年成人の比較分析をする実験を行った. 若年成人として大学生同性2~3人の組8組 (20名) ならびに65歳以上の高齢者2人組8組 (16名) の参加を得て, 60分間カプラを自由に利用する活動を分析した結果, 高齢者は若年成人と比較して, 目的を持たずに人工物と多様な相互作用を試すことに対して消極的であることがわかった. また, 具体的な目標を立てた上で相互作用を行うが, その際に目標によって創発的な使用が制約されていることが明らかとなった. 新しい人工物に対する利用行動に大きな加齢変化があることが示されたことから, 高齢者を主なターゲットとする機器開発において, 創発的使用をいかに支援していくべきか, について考察を行った.