著者
新谷 洋二
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.235-242, 1986

わが国の都市には近世初頭に建設された城下町に端を発するものが多いので、その成立の経緯・時期は都市計画史上のみならず土木史上からも重要である。また近世の城は必ず城下町をともなっていた。これらの近世の城と城下町の創築状況を中部・大類・鳥羽・玉置らの成果を基にして、小川は「日本土木史概説」の中に有用な一覧表を作成して示している。しかし上記諸文献の記述の中には幾つかの問題点が存在することが見出だせる。これは城と城下町の成立年代が不確かで、複数個以上の説が存在するだけでなく、近世の城が土木・建築構造物であるために、土木工事 (普請) の完成か、建築工事 (作事) の完成かによって、示された年次に混線があること、また年次自体をとってみても、それが領主の入部の時期か、あるいは工事の計画・着工・概成・完成のどの時期を示すのかも曖昧であることにもよっている。人名・地名の変更も混線の一因となつている。以上の課題を明確にするため、年表作成上、問題点の見出だせる幾つかの城と城下町についてケース・スタディを行い、正しい表現のあり方を検討するとともに、城郭史年表に関して試論的な検討を行うことによって、土木史年表の作成に当たって検討すべき課題を考究した。

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