著者
岡本 美穂二 安冨 徹
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.634-637, 1975

消化管の手術においては, 消化管内に存在するグラム陽性およびグラム陰性の細菌による手術野の汚染は, 一般に避けることができないとされている。<BR>手術中に汚染された腹腔内の感染予防のために, 細菌に直接作用させることを目的として, 抗生物質を手術終了直前に腹腔内に注入する方法がある。腹腔内に投与された抗生物質は, 腹膜を介して血液中に移行するが, 腹膜の吸収能は, 横隔膜下腹膜, 大網, 消化管を包む腹膜が, 他の部位の腹膜よりも特にすぐれた透過性を有しており1), 抗生物質は腹腔内投与によつても速やかに血液中に移行し, 有効血中濃度が得られるとされている2)。したがつて, この方法は, 術後の全身性の感染症の予防にも効果が期待できるものと考えられる。<BR>我々は, 従来から腹部手術においては, 手術終了直前に抗生物質を腹腔内に注入することを原則としているが, 注入する抗生物質は副作用の少ないものを使用するように心掛けている。今回, 広範囲スペクトルをもつ殺菌性の抗生物質で, 毒性が低く, 特に腎毒性が少ないために術後の感染予防に広く用いられているSodium cephalothin (商品名ケプリン, 以下CETと略す) を, 腹腔内投与および全身投与に使用し, その併用療法における臨床効果を検討したので報告する。

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