著者
東 健一郎 波多野 光紀 平岡 興三 鈴木 英太郎
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF CHILD NEUROLOGY
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.349-357, 1974

1970年から1972年までの3年間におれおれの教室で, 外科的治療を要する乳児化膿性髄膜炎の症例9例を治療した. その内訳は, 水頭症7例, 脳膿瘍1例, 硬膜下膿瘍1例であつた.<BR>水頭症に対しては, 髄液が無菌となつてからすくなくとも2カ月間観察した後に, 脳室腹腔シャントを施行した. このような注意深い治療にも拘らず, 大部分の患者で, シャントバルブの閉塞や感染のために, 頻回のシャント再建が必要であつた. 髄液の長期間にわたる蛋白および細胞数の増加は, シャントバルブの疏通性を妨げる原因となるものである. われわれは, このような障害を克服するために, 皮下に留置したOmmaya貯水槽による頻回の髄液排除, あるいは脳室洗浄による髄液の稀釈を行なつて, よい成績を得た. 脳膿瘍の患者は, 後に発生した水頭症の手術後死亡したが, 硬膜下膿瘍の患者は膿瘍腔のドレナージによつて完全に治癒した.<BR>われわれの経験では, このような化膿性髄膜炎の合併症の外科的治療は, 術前に神経学的脱落症状がなければ良い結果を得ることができる. したがって, 外科的治療は不可逆性の脳損傷がおこる前に, 出来る限り早く行なわなければならない.

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