著者
平木 彰佳 菊地 正広
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.34-38, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20

イオン飲料の多飲によるビタミンB1欠乏からWernicke脳症を発症した2例を経験した. 症例1は1歳3カ月男児で, 頻回の嘔吐が先行し, 意識障害と眼球運動障害, 運動失調で発症した. 症例2は7カ月男児で, けいれん重積で発症した. 2例ともビタミンB1投与で症状は改善したが, 症例2は神経学的後遺症を残した. 本疾患は嘔吐が先行することが多く, 症例1のように初期に胃腸炎と診断されることもある. 胃腸炎の診断でイオン飲料を多用することには注意を要する. 症例2はけいれん重積での発症で, 非典型的であった. 2例はいずれも偏食とイオン飲料の多飲があり, 日常診療では患児の摂食状態の把握と適切な栄養指導が重要である.
著者
今井 祐之 浜野 晋一郎 野田 洋子 奈良 隆寛 小川 恵弘 前川 喜平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.494-499, 1997-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
10

劇症型亜急性硬化性全脳炎の3歳男児例を報告した.本児は, 9カ月時に麻疹肺炎に罹患し, 2歳4カ月時にMMRワクチンを接種している.3歳4カ月時に傾眠と左片麻痺で発症し, 第10病日には昏睡状態となり, 1カ月半で除皮質硬直位となった.髄液の麻疹抗体価の異常高値からSSPEを考え, inosine pranobexの投与を行ったが効果はなく, 発症3カ月目に多発性脳出血をきたし, 全経過4カ月で死亡した.剖検では, 乏突起膠細胞内に抗麻疹抗体陽性の封入体を認め, 血管周囲の白血球浸潤, グリア結節や白質のグリオーシスなどの典型的病理所見のほかに小血管の内膜の肥厚, 閉塞像・再疎通像など血管炎の関与を示唆する所見がみられたのが特徴的であった.
著者
冨岡 志保 下野 昌幸 加藤 絢子 高野 健一 塩田 直樹 高橋 幸利
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.42-46, 2008-01-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
9

全般性けいれんの後に発熱, 頭痛, 項部硬直が持続した16歳男児.ごく軽度の意識低下, 脳波で前頭葉に連続性棘徐波および髄液細胞数上昇, IgG indexの上昇とoligoclonal IgG band陽性を認めた.頭部MRIのFLAIR像で両側半球に散在する部分的灰白質の信号亢進が疑われた.髄膜脳炎と判断し, methylprednisolone pulse療法を実施したところ, 臨床症状と脳波異常は軽快した.髄液中の抗グルタミン酸受容体 (以下GluR) は入院時ε2・δ2に対するIgG・IgM抗体がともに陽性であり, 軽快時は両抗体がともに陰性となった.抗GluR抗体が陽性になる髄膜脳炎の中に, Rasmussen脳炎とは明らかに異なる経過をとり, 治療に反応する予後良好な一群が存在する可能性が強く示唆された.
著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012-11-01

ノイロトロピン<sup>®</sup> (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
浜口 弘 有馬 正高
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.551-552, 2000-11-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
6

知的障害児者居住施設における急性死57例のアンケート結果を得た.死因として, 突然死が20例認められ, 残りは虚血性心疾患11例, てんかん重積発作8例, 脳血管障害7例, 呼吸器疾患6例, その他5例であった.突然死群では, 情緒障害などの中枢神経症状のために向精神薬を内服していた例が他の死因群に比して多く認められた.この突然死群の向精神薬内服状況を東京近郊の居住施設入所者の状況と比較すると, 有意に向精神薬の種類が多く, 中には内服量も通常量を越える例が認められた.多種多量の向精神薬を必要とする情緒・行動障害にも問題はあると思われるが, 向精神薬自体に突然死を引き起こす危険があることを念頭に置く必要性がある.
著者
亀井 淳 佐々木 真理 赤坂 真奈美 千田 勝一
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.348-352, 2002-07-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

Epstein-Barr (EB) ウイルス脳症に起因する不思議の国のアリス症候群において, これまで頭部画像検査による特異的な異常は記載されていない.今回, EBウイルス脳症に罹患して本症候群に特徴的な身体像の奇妙な変形, 幻視, 離人症状を呈し, 頭部CTで異常がなく, MRIの T2強調像で大脳灰白質に広範かつ散在性の高信号と腫脹を認めた10歳の女児を経験した.このM RI所見は1週間後に改善した.EBウイルス脳炎・脳症で視覚性錯覚や精神症状を示した症例の中には, 本症候群が診断名としては用いられていないが, MRIの異常を一過性に認めたとする報告がある。したがって, 本症候群を形成する症状がみられた場合は, タイミングを逃さずにMRI検査を行う必要があると考えられた.
著者
平安 京美 大城 聡 仲田 行克
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.427-431, 2010 (Released:2015-11-21)
参考文献数
16

1977年から2005年までに沖縄県で発生した亜急性硬化性全脳炎 (SSPE) は22例 (男性16例, 女性6例) であった. 1999年時調査より6例増加していた. 2000年から2005年までの発生頻度は, 人口100万人当たり年平均0.75人であった. 本県では予防接種率が低く (40~71%), 2001年まで麻疹の流行を繰り返していた. その際, 低年齢での罹患が多いことが未だにSSPEが発生している要因の一つだと思われた. また, 1990年から1991年までの麻疹罹患者から10例のSSPEが発生していた. 流行するウイルスの神経病原性にも関連があると思われた.
著者
友田 明美
出版者
The Japanese Society of Child Neurology
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.345-351, 2011-09-01
参考文献数
22
被引用文献数
1

児童虐待は, 日本の少子化社会の中でも近年増加の一途をたどっている. 小児期に様々な虐待経験のある被虐待者脳MRI形態の検討により, 虐待や育児放棄による幼少期母子関係の破綻 (愛着形成の障害) が社会性の発達障害を引き起こすこと, さらにその障害が脳の構造機能の変容に起因することが示唆された. 「性的虐待」では, 最初に目に映った情報を処理する脳の視覚野で脳の容積が減ったり, 「暴言虐待」では, コミュニケーション能力に重要な役割を持つ聴覚野で大脳白質髄鞘化が異常をきたしたりすることが明らかになった. 被虐待児に認められる "社会性発達障害" という観点から, こころに負った傷は容易には癒やされないことが予想される. 被虐待児たちの精神発達を慎重に見守ることの重要性を強調したい. しかしながら, 被虐待児たちの脳変成も多様な治療で改善される可能性があると考えられる.
著者
成田 有里 浜野 晋一郎 黒田 舞 菊池 健二郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.425-429, 2016 (Released:2016-11-09)
参考文献数
7

【目的】小児の心因性非てんかん発作 (psychogenic non-epileptic seizure ; PNES) の実態はよくわかっていない. 今回, 当センター神経科から心理外来へ依頼のあった症例について検討した. 【方法】対象は男児2例, 女児13例, 日本てんかん学会治療ガイドラインの分類に従い, ①てんかん発作が併存 (7例), ②知的障害を伴わず, てんかん発作が併存しない (7例), ③知的障害が併存 (1例) の3群に分け, 身体症状やその症状の誘因や原因と考えられる背景, 対応方法, その後の経過について検討した. 【結果】①群でてんかんと心因性非てんかん発作の両方とも治療終了できたのは1例のみで, 5例は転院, ②群ではてんかんの治療は全例終了, PNESについては症状の改善はみられるが終了は1例のみ, ③群はてんかんもPNESも治療終了できた. 【結論】②群は小児神経科医から, てんかんではない可能性についての説明が重要で, ③群は心理相談によって本人の発達について親の理解を促すことが重要ではないかと考えられた. ①群ではより対応の難しさがあるため, 小児神経科, 児童精神科, 心理などが協力して対応すべきと考えられた.
著者
友田 明美
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.345-351, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
22

児童虐待は, 日本の少子化社会の中でも近年増加の一途をたどっている. 小児期に様々な虐待経験のある被虐待者脳MRI形態の検討により, 虐待や育児放棄による幼少期母子関係の破綻 (愛着形成の障害) が社会性の発達障害を引き起こすこと, さらにその障害が脳の構造機能の変容に起因することが示唆された. 「性的虐待」では, 最初に目に映った情報を処理する脳の視覚野で脳の容積が減ったり, 「暴言虐待」では, コミュニケーション能力に重要な役割を持つ聴覚野で大脳白質髄鞘化が異常をきたしたりすることが明らかになった. 被虐待児に認められる “社会性発達障害” という観点から, こころに負った傷は容易には癒やされないことが予想される. 被虐待児たちの精神発達を慎重に見守ることの重要性を強調したい. しかしながら, 被虐待児たちの脳変成も多様な治療で改善される可能性があると考えられる.
著者
平安 京美 仲田 行克 大城 聡 高江洲 悦子 中村 恭子 城間 直秀 嶺間 博隆
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.21-25, 2004-01-01 (Released:2011-12-15)
参考文献数
16

1977年から1999年までの23年間に沖縄県 (以下本県) で発生した亜急性硬化性全脳炎 (SSPE) は, 16例 (男児11例, 女児5例) であった. 本県のSSPE発生頻度は, 人口100万人当たり年平均0.58人で, これまでの本邦の報告に比べ高率であった. 本県の予防接種率は低く (40~68%), 麻疹の流行を繰り返し, 低年齢での罹患が多いことが, SSPEの発生頻度が高い要因の一つであると思われた. また, 1990年の麻疹罹患者から6人のSSPEが発症しており, 流行するウイルスの神経病原性にも関連があると思われた. 臨床像では, 1990年以後の発症例で, 血清麻疹抗体価の低下傾向が認められた.
著者
小俣 卓 新井 ひでえ 田邉 雄三
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.465-468, 2008-11-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
14

多動, 興奮, 急に泣き叫ぶなどの精神症状が初発症状であったマイコプラズマ感染後の急性散在性脳脊髄炎 (acute disseminated encephalomyelitis; ADEM) の1例を経験した.ADEMの初発症状として精神症状は稀で, はじめに精神疾患や心因性疾患が疑われ診断に苦慮する可能性が考えられた.意識障害やけいれんなどの典型的な脳炎・脳症徴候が明らかでない場合においても, 急性の精神症状を呈した場合, 感染症・予防接種歴を確認しADEMを鑑別診断の一つに考える必要があると思われた.
著者
山下 哲史 千代延 友裕 吉田 路子 諸戸 雅治 森田 高史 森岡 茂己 加藤 光広 才津 浩智 森本 昌史 細井 創
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.64-66, 2013 (Released:2014-03-03)
参考文献数
10

STXBP1変異による大田原症候群の1例を経験した. 新生児期に部分発作で発症し, 生後1カ月よりepileptic spasmsが出現した. その後, 種々の抗てんかん薬およびACTH療法に対して難治に経過したにもかかわらず, 生後8カ月より開始したlevetiracetam (LEV) が著効した. STXBP1変異がもたらすてんかんの病態とLEVの作用機序を考察する上で示唆に富む症例と考えられたため報告する. 一方で, 発作が抑制されたにもかかわらず痙性を伴う重度の発達遅滞を呈しており, STXBP1のハプロ不全はてんかんのみならず, 神経機能に重大な障害を引き起こすことが示唆される.
著者
児島 将康
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.87-90, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
17

グレリンは胃から分泌される成長ホルモン分泌促進活性や摂食亢進作用をもつペプチド・ホルモンで, その特徴的な構造は3番目のアミノ酸であるセリン残基の側鎖が, 中鎖脂肪酸であるn-オクタン酸の修飾を受けていることである. しかもこの修飾基がグレリンの活性発現に必須である. グレリンは強力な摂食亢進作用を示す. 中枢においてグレリンは, 視床下部弓状核のニューロンを活性化して, 摂食亢進作用を発揮する. 胃から分泌され血中を流れるグレリンは, 末梢からの空腹シグナルを中枢に伝える液性因子として現在のところ唯一の例である.
著者
市場 尚文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.470-475, 1984 (Released:2011-08-10)
参考文献数
36

折れ線型自閉症の病態生理の解明のため, Rutterの診断基準にもとつく幼児自閉症28名と折れ線型自閉症22名の計50名を対象として, 臨床的脳波学的検討を行った。その結果, 折れ線型自閉症では特異な経過で自閉症を発症する他, 幼児自閉症に比較して脳障害を示唆する臨床的脳波学的所見が少ない傾向があること, psychic traumaと考えうる誘因を有する症例が多いこと, 予後とくに言語予後が不良であることが特徴的であった.このため, 折れ線型自閉症の成因としては, 幼児自閉症の成因とされている脳器質性障害による言語認知障害とは異なる機序が推測された.
著者
大澤 純子 杉江 秀夫 福田 冬季子 伊藤 政孝 杉江 陽子 大関 武彦
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.424-425, 2005-09-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
7

Manningらは自閉症児の第2指 (2D) と第4指 (4D) の長さの比 (2D/4D比) が低値であると報告したが, 本邦における報告はまだない. 今回我々の行った検討では, 本邦における自閉症児でも健常児と比べると2D/4D比は低値であった. 2D/4D比が低値となる要因としては, 胎児期に高濃度のtestosteroneに暴露されることと, 遺伝的要因としてアンドロゲン受容体遺伝子との関連が示唆されている. 2D/4D比は他の発達障害である注意欠陥/多動性障害児, 知的障害児では健常児と比べて有意差を認めなかった. 2D/4D比が一部の自閉症の身体所見の特徴のひとつとして利用できる可能性について症例数を増して検討する必要がある.
著者
斎藤 義朗 福村 忍 齋藤 貴志 小牧 宏文 中川 栄二 須貝 研司 佐々木 征行
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.477-481, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
15

ノイロトロピン® (Neurotropin, ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液) は頸肩腕症候群や帯状疱疹後疼痛に有効であり, 成人の一次性頭痛に対する効果も報告されている. 今回, 他の各種薬剤に効果が乏しかった慢性頭痛の小児2例で本剤が有効であった. いずれも中学生女子, 片頭痛を発症して2~3年後に増悪をきたし, 不登校にいたった経過で, 起立性調節障害の併存, 間欠的な四肢・背部の疼痛, MRI上の大脳白質散在性病変も共通していた. Neurotropinには他の鎮痛薬にはない下降性疼痛抑制系の増強効果があり, 小児の難治な慢性頭痛にも有効と示唆された.
著者
加賀 佳美
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.243-249, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
48
被引用文献数
1

注意欠陥・多動性障害 (attention deficit/hyperactivity disorder; ADHD) は, 近年症例数の増加に伴い, 均てん化された診断と治療や介入法の確立が急務となっている. 現状のADHD診断は質問紙などを用いて保護者から聞き取り, 問診や診察を通して下される. しかし質問紙は主観的な評価に基づいているため信頼性に乏しい. 従って客観的評価が可能な神経生理学的バイオマーカーの開発が重要と考える. 本稿は非侵襲的脳機能検査法のうち頭皮上脳波の周波数解析, 事象関連電位 (ERP) や近赤外線スペクトロスコピー (NIRS) の研究成果がADHD診断におけるバイオマーカーに活用可能であるかどうかをまとめた. その結果, ①覚醒安静時脳波でADHDのθ/β帯域パワー値の比率増大を診断に利用する試みがある一方, 信頼度に賛否がある点も事実である. ②ERPのうちP300, NoGo電位やmismatch negativityはADHDの診断や薬物効果判定に用いられている. ③NIRSは装着が簡単で, 特に前頭部皮質の計測が行いやすい. 幼児から学童の前頭葉機能評価に適しており, ADHDの認知特徴 (不注意, 実行機能) の評価に長けている. 以上のように, 脳波, ERP, NIRSはADHDの神経生理学的state markerとしての可能性があり, 診断補助, 重症度判定, 治療効果判定等に活用されると考えられる.