著者
黒石 裕樹 村上 真幸 海津 優
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.63-74, 1992

国土地理院が構築した日本重力基準網1975(JGSN75)は,わが国における全ての重力測定の基準値を提供してきた.この網は国際重力基準網1971に準拠しているが,絶対重力測定を全く含んでいない.国内では,近年重力測定が高精度かつ高密度に行われるようになり,基準となるJGSN75の,絶対値の精度の向上が求められるようになった.そこで,国土地理院では,絶対重力計を導入して重力網の高精度化を図ることとした.筆者らは,佐久間式絶対重力計を改良し,1985年以来全国12ヶ所の基準重力点において重力絶対値を決定してきた.それらの観測結果から,絶対重力測定は精度及び再現性とも10μGalよりも高いことが確かめられた.これらの基準重力点を骨格として, 全国約300点から成る一等重力網を構築し,第一回観測を1991年末までに終了した.北海道地区の一等重力網について試験的に行われた網平均結果から,この網全般にわたり,ほぼ10,uGalの精度で重力値が決定されることを確認している. 日本列島は,地震や火山噴火などの地殻活動が極めて活発な地域に位置している.それらの活動に伴う地殻上下変動の検出は,地震や火山活動の予知の研究において極めて重要な課題である.これまで,主に験潮や精密水準といった測量によって,相対的な上下変動の検出が行われてきた.これに対し,地殻活動に伴った重力変化は,地殻上下変動の絶対的な量について重要な情報を提供することが知られている.そこで,国土地理院では,絶対重力測定と一等重力測量を,一等水準測量と併せて5ないし7年を周期として繰り返し行うことを計画している.10μGa1の重力変化は,3~5cmの地殻上下変動に相当することから,一等重力網により,全国にわたり,地殻上下変動を数Cmの精度で監視することができる.また,一等水準測量結果との比較により,地殻上下変動のプロセスを解明することが期待できる.従つて,絶対重力測定に基づいた一等重力・水準網の確立により,地殻上下変動の高精度監視網が構築されたといえる.

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