著者
崔 在和 佐藤 裕
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.159-180, 1997

最近完了した韓:国の新精密測地測量の成果と,1910-1915年に実施された旧三角測量の成果との比較から,韓国における過去約80年間の地殻水平歪みを求めた.韓国の最大剪断歪み速度の平均は0.12μ/yrで,日本の値の約1/3程度であり,その分布パターンは,韓国の地震活動の空間分布と調和的である。圧縮歪み主軸方位の平均はN80°Eである.この歪み主軸方位は,韓半島周辺の地震メカニズムのP一軸方位分布と良く対する.面積歪みは,新旧測量のスケール誤差のため,求めていない.
著者
村田 正秋 山本 富嘉 浜田 康弘
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.31-42, 1991

GPS(全世界測位システム)衛星の軌道決定システム(MSOP)を開発した.MSOPは多衛星同時軌道決定プログラムで,疑似距離データからGPSの宇宙部分を構成する衛星群の軌道を同時に決定することを目的としている.ここでは,太陽輻射圧とyバイアスのモデリングを中心に,GPS衛星の精密軌道決定のための手法を検討し,実際にCIGNETデータによって軌道決定実験を行ない,GPSの測地利用に望まれるサブppmの衛星位置精度が達成されていることを示す.軌道精度の評価は,CIGNETのPコード疑似距離データからMSOPによって決定された軌道を,米海軍兵器センター(NSWC)の精密暦と直接比較することによって行なう.その結果,疑似距離によるGPS衛星の軌道決定精度はa全衛星平均で10mすなわち0.5ppmより良好であることが示された.
著者
岩田 隆浩 南野 浩之 佐々木 健 小川 美奈 並木 則行 花田 英夫 野田 寛大 松本 晃治 今村 剛 石原 吉明 鶴田 誠逸 浅利 一善 劉 慶会 菊池 冬彦 Goossens Sander 石川 利昭 河野 宣之 高野 忠
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.135-150, 2009-07-25
被引用文献数
10

SELENE Main Orbiter (KAGUYA) has separated two small sub-satellites; (1) the Relay Satellite "OKINA (Rstar)", and (2) the VLBI Radio Satellite "OUNA (Vstar)". These sub-satellites started to perform 4-way Doppler measurements using Relay Satellite Transponder (RSAT) and multi-frequency phase-delay differential VLBI using VLBI Radio Sources (VRAD) for lunar gravity mapping. We have developed the frequency conversion system, multi frequency S/X-band vertical dipole antenna, and light weighted S-band patch antenna to perform these missions. Simple structured release mechanism has also been developed and confirmed its performance by ground test and orbital demonstration using micro-Lab Sat.<BR> Initial check out were executed and properties of satellite bus equipments, onboard mission instruments, and observation systems including ground stations were evaluated. Electric power and thermal control subsystems have shown that they conduct as designed and inspected in the ground tests. The release mechanisms have given the spin which can maintain the stability of the satellite attitudes. Communication functions of mission instruments conform to the link budgets. These results suggest that OKINA and OUNA have enough performances to produce efficient data by RSAT/VRAD gravity observations.
著者
黒石 裕樹 村上 真幸 海津 優
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.63-74, 1992

国土地理院が構築した日本重力基準網1975(JGSN75)は,わが国における全ての重力測定の基準値を提供してきた.この網は国際重力基準網1971に準拠しているが,絶対重力測定を全く含んでいない.国内では,近年重力測定が高精度かつ高密度に行われるようになり,基準となるJGSN75の,絶対値の精度の向上が求められるようになった.そこで,国土地理院では,絶対重力計を導入して重力網の高精度化を図ることとした.筆者らは,佐久間式絶対重力計を改良し,1985年以来全国12ヶ所の基準重力点において重力絶対値を決定してきた.それらの観測結果から,絶対重力測定は精度及び再現性とも10μGalよりも高いことが確かめられた.これらの基準重力点を骨格として, 全国約300点から成る一等重力網を構築し,第一回観測を1991年末までに終了した.北海道地区の一等重力網について試験的に行われた網平均結果から,この網全般にわたり,ほぼ10,uGalの精度で重力値が決定されることを確認している. 日本列島は,地震や火山噴火などの地殻活動が極めて活発な地域に位置している.それらの活動に伴う地殻上下変動の検出は,地震や火山活動の予知の研究において極めて重要な課題である.これまで,主に験潮や精密水準といった測量によって,相対的な上下変動の検出が行われてきた.これに対し,地殻活動に伴った重力変化は,地殻上下変動の絶対的な量について重要な情報を提供することが知られている.そこで,国土地理院では,絶対重力測定と一等重力測量を,一等水準測量と併せて5ないし7年を周期として繰り返し行うことを計画している.10μGa1の重力変化は,3~5cmの地殻上下変動に相当することから,一等重力網により,全国にわたり,地殻上下変動を数Cmの精度で監視することができる.また,一等水準測量結果との比較により,地殻上下変動のプロセスを解明することが期待できる.従つて,絶対重力測定に基づいた一等重力・水準網の確立により,地殻上下変動の高精度監視網が構築されたといえる.
著者
坪川 恒也
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.281-294, 2004-12-25
被引用文献数
2

佐久間式絶対重力計で有名な佐久間晃彦先生が,2004年8月19日パリ郊外セーブル市の自宅で逝去されました.享年73歳.謹んでご冥福をお祈り致します. 先生は,昭和6年宮城県仙台市にお生まれになり,昭和28年(1953)東北大学理学部物理学科卒業と同時に,当時の通産省中央計量検定所(現在の産業技術総合研究所,計量研究所)に入所され,日本で最初に自由落下方式による絶対重力計の開発を手掛けられました.その後,昭和35年にフランスに渡り,国際度量衡局(BIPM)の研究員として,平成8年までの36年間に渡って,重力加速度の絶対測定の研究に従事され,特に,佐久間式と総称される,投げ上げ方式の絶対重力測定法の確立および製品化と,絶対重力網の整備に大きな功績を残されました.まさに絶対重力測定の研究に,半生を捧げられたと言っても過言ではありません.佐久間先生がBIPMに入所された頃は,国際機関とはいえ白人主導の組織の中で,日本人が単独で乗り込んで研究することに,かなりご苦労されたのではないか,と推察致します.そのような環境の中でも,絶対重力測定をテーマとした精密計測に対する佐久間先生の熱いお気持ちが,あのように独創的な絶対重力計として実を結び,まさに日本人の優秀さを世界に認あさせたのではないでしょうか. 佐久間先生には,緯度観測所の固定局型の佐久間式絶対重力測定装置の導入当時から,ご指導頂きました.穏やかな物腰ながら信念を持った,古き良き時代の典型的な日本人との印象を受けました.図1は1989年の第3回絶対重力計国際比較測定をBIPMで主催された時のスナップショットです.ここでは,佐久間先生という偉大な大先輩を偲んで,絶対重力計の開発に携わってきた一人として先生を偲びつつ,絶対重力計開発の経緯と現状について述べたいと思います.
著者
坪川 家恒
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.116-119, 1973

Scholz et al, explained precursory phenomena and their durations before earthquakes by dilatancy of the crust, and proposed the relation between the duration period and the magnitude of the earthquake expected which is quite near to the relation proposed by the writer in 1969. The writer also points out the duration period due to dilatancy must be shortened for an earthquake larger than M7, 0 and disappears larger than about M7, 7.
著者
角田 忠一
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.223-235, 1983

水沢,東京およびIrkutskにおける時刻および緯度の光学観測結果を利用し,東南アジアプレートの変形をしらべた.水沢および東京の時刻観測値とIrkutskの時刻観測値の差から約1msecの経度変化が見られた.この経度変化は地球自転速度変化との相互作用を示唆している.剛体マントルとプレートの粘性結合模型によりこの相互作用を説明することが可能である.
著者
藤田 尚美 間所 啓一郎
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.125-131, 1969

月平均潮位の解析に修正差方式― ある海域内で,二つの検潮所の月平均潮位の差をとり,年周変化を消去する方法―を導入した.修正差の方式を用いると,単純差の場合に比して,2検潮所の月平均潮位の差の不規則性はかなり減小する.その標準偏差は,約15mmと考えられる. 新潟地震については,1)新潟地震前の月平均潮位の差には,1959年のわずかな経年変化の変動を除いて,異常変動は認めにくい.2)柏崎を基準として,地震の際の地殻の上下変動として岩崎は動かず,鼠ケ関は約20cm下がり,輪島は2~3cm下がつたように見える.3)鼠ケ関-柏崎の月平均潮位の差の経年変化は,地震前後で変化したように見える.このような例は,南海道地震の際,紀伊半島南端の串本検潮所の潮位変動にもみられる. 1968年十勝沖地震については,1)小名浜を基準にして,八戸,宮古の地盤は数cm下がつたようである.2)小名浜を基準にして,八戸,宮古検潮所の1966年の異常変化は海象による可能性がある.
著者
田中 豊
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.73-85, 1985

地震予知の基礎的研究として,1978年以来大学,国立防災科学技術センター,地質調査所は,応力解放法,水圧破壊法,その他新開発された方法により応力測定を実施してきた.1984年中期までには地下開発設計や地熱開発計画に際し実施された測定を含めて50余地点の測定結果が報告された. これらの測定成果を概括し,方法,條件,地域を異にする測定値を比較し,現時点での応力測定の有意性を検討しておく必要がある.理論的厳密な補正は今後の研究を待つこととし,比較のため簡便なデータ処理を施し,応力測定成果を概観することにした. 1)水平最大応力方向は平均的にはテクトニツクな応力状態を十分反映していると思われる. 2)応力深度勾配は各地でそれぞれ異なる.応力解放法では限定地域内で西日本の標準応力深度勾配を求め,これと水圧破壊法による勾配と比較した.平均水平応力,水平せん断応力に関しては,西日本の深度勾配は水圧破壊法により東日本各地で得られた値のほぼ平均を示し,深度勾配の比較は,地下の応力状態を推定し,応力区を類別するために有用と思われる.3)応力深度勾配を用い,各深度の測定値を標準深度(今回300m)の応力値に換算し,水平主応力の地域分布図を画いた.これは応力区の広がり7活断層との関連,局地的異常など壷調べる上で有効と思われる.4)極浅発地震の発震機構から中間主応力軸は必ずしも鉛直ではないことが知られている.上部地殻の応力状態を明解に.示すたあ,3次元応力測定で得られた最大せん断応力面をステレオ投影した.これは地形影響の判定と同時に,活断層地域の局所的応力状態の推定にも役立つ. 以上のように各種の応力測定は十分地震予知の基礎研究として成果をあげつつあるが,応力変化を求めるにはまだ精度が不足であり精度向上と同時に,各種條件下の多数の測定資料がなお必要である.
著者
花田 英夫 岩田 隆浩 菊池 冬彦 劉 慶会 松本 晃治 浅利 一善 石川 利昭 石原 吉明 野田 寛大 鶴田 誠逸 Petrova Natalia Goossens Sander 原田 雄司 佐々木 晶 並木 則行 河野 裕介 岩館 健三郎 亀谷 收 寺家 孝明 柴田 克典 田村 良明 矢作 行弘 増井 亘 田中 孝治 前島 弘則 洪 暁瑜 平 勁松 艾力 玉〓甫 Ellingsen Simon Schlüter Wolfgang
出版者
The Geodetic Society of Japan
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.203-221, 2009-07-25
被引用文献数
5

The Japanese lunar explorer SELENE (KAGUYA), which has been launched on Sep. 14th, 2007, utilizes VLBI observations in lunar gravimetry investigations. This can particularly improve the accuracy of the low degree gravitational harmonics. Combination of ground based VLBI observations and Doppler measurements of the spacecrafts enable three dimensional orbit determinations and it can improve the knowledge of the gravity field near the limb. Differential VLBI Radio sources called VRAD experiment involves two on-board sub-satellites, Rstar (Okina) and Vstar (Ouna). These will be observed using differential VLBI to measure the trajectories of the satellites with the Japanese network named VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry) and an international VLBI network.<BR>Two new techniques, a multi-frequency VLBI method and the same-beam VLBI method, are used to precisely measure the angular distance between the two sub-satellite radio sources Okina and Ouna. The observations are at three frequencies in S-band, 2212, 2218 and 2287 MHz, and one in X-band, 8456 MHz. We have succeeded in making VLBI observations of Okina/Ouna with VERA and the international network, and have also succeeded in correlating of signals from Okina/Ouna, and obtained phase delays with an accuracy of several pico-seconds in S-band.