- 著者
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本田 正次
- 出版者
- The Botanical Society of Japan
- 雑誌
- 植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.769, pp.168-171, 1952
- 被引用文献数
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佐渡の北部海岸の草原地帯に産するシオデの一種は莖が剛強で直立性が強く, 節間が短縮して葉が多い。花は小花梗が短くて密集する觀があり, 新種として発表したい。清水大典氏が昭和25年8月奥秩父で採集され弛ベンケイソウの一種はミツバベンケイソウに比べて株立ちとなり, 花が正開せず, 秋になると上部の葉腋に無数の肉芽を生する特性があるので, これも新種として発表する。清水大典氏はその生育地を次の様に説明しておられる。「奥秩父山地の西の縁に御座山(オグラサン)が位置し, 又地質的にも秩父古生層の分布の西界点に当る山で主峰御座山の高度は2,112,1mで, その山頂から東方に向つて秩父三国峠甲武信岳の主稜を形造る彌次平尾根が走つており, このベンケイ草の生育地はこの御座山頂から彌次卒尾根を約1キロばかり東に進んだ高岩 (昭和25年の初縱走で新しく命名した硅岩の突峰) の崖に著生しているもので, 生育点は岩石ではあるがコメツガの森林に接して比較的濕気が多く, 蘇類のよく育つ処である。そしてこの生育点の高度は海抜1,980m位で, 生育する稜線が長野県南佐久郡の南相木村と北相木村の境界線をなしておる。又この草の生育量はあまり多くはなく, 大体2地点30株位であろう。」<br>桑名高校の安井直康氏の採集で, 三重県三重郡三重村にある大池の沼沢地に産し, タテヤマリンドウの更に小さくなった一変種と思われるものがある。安井氏によればハルリンドウと混生し, 現場は標高30mの低所だそうである。サルイワツバキ即ちユキツバキを最初に調査に行った時の帰途立ち寄った若柳村愛宕小学校の校庭で見たケンポナシは葉が小さく, 黄金色を呈し, 脈に沿うて僅かに緑が殘つている葉もあるという変り方であった。病的のものと思われる。ネズミモチの果実が熟しても黒くならないで白色または帯黄白色を呈するものを山脇哲臣氏が高知市旭の山麓で採集された。また同氏は愛媛県北宇和郡と南宇和郡との境界に当る由良半島の中間部でネズミモチが完全に地に伏してはう形のものを発見採集された。秋田県仙北郡荒川村で古家儀八郎氏が採集されたシナノキの一種は苞が狹細で先端が細く尖つている点が基準種と違つているので新変種とした。<br>北海道天塩国士別町西士別で佐々木太一氏が採られたアマドコロ属の一種はオオアマドコロと思われるが, 葉腋毎に枝をうつて, 更に葉と花とをつけた新しい変種である。シロバナヘビイチゴの花の淡紅色のものを竹中要氏が富士山で採集されたが, これは曾て日光の志津で中井博士が採られたものと同一品と思われる。愛媛県皿け嶺で山本四郎氏の採集されたタツナミソウの一種はハナタツナミソウの白花品であるから新品種として記載する。<br>ヤハズエンドウの白花品も山本四郎氏によつて同県温泉郡難波村下難波の路傍で探集された。ヒメノガリヤスの葉裏 (本来の表) が白味を帯びている変種が同氏によつて皿ケ嶺採られている。ヤブウツギの白花品が同県周桑郡櫻樹村にあり, これも山本四郎氏によつて採集された。石槌山西冠岳で同氏の採集されたカラマツソウ属の一種はアキカラマツの高い山に上った形とも見られるが, 高さが低く, 小葉の形に異点が認められ, 葉の表裏ならびに果実に細かい腺点が見られるので別種と考えた。