著者
黒岩 澄雄
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.865, pp.300-309, 1960
被引用文献数
12

種内競争の解析1-3) を縞枯山の<i>Abies</i> 針葉樹林で行なったがこの解析をより充分にするため, 種子重につき正規分布をもったヒマワリ種子の正方形播きで4密度区 (400,200,100,25本/m<sup>2</sup>) を作って種内競争を研究した.<br>個体重や草丈の順位は播かれた種子の重さの順位のままであることは Spearman の順位差法<sup>15</sup>) による計算で得た高い相関度から推定し, 高密度区の生育後期には小個体階級のみにおいて枯死体を観察した.<br><i>Abies</i> 森林での全階級にわたる枯死体の出現は, 密度効果の解析結果<sup>11,12</sup>)から群落構成個体の間隔の不規則性によると推論した. 生育初期に個体重について階級分けされた各階級の平均個体の重さや草丈についての生長曲線を追跡し, 重量生長率では高密度区ほど, また生育後期ほど大個体が小個体より大きく,草丈生長率では大差なかった. 重量度数分布はN型からL型<sup>6</sup>)へと移行し, それは生育後期ほどまた高密度区ほど顕著であったが, 草丈度数分布はほぼN型を維持していた. 他方, このような度数分布の時間変化を各階級の平均個体の重量生長を用いて, 簡単な作図法で図示し, 度数分布の変化は階級間での生長率の差によって引起されることを証明した. 同化能や呼吸能それに同化器官と非同化器官との量的関係についても階級間で大差なかったが, 大個体ほど葉層の位置は高くその受光率は非常に高かったので階級間での重量生長率の差はこの受光率の差によると推論した. この推論をたしかにするためヒマワリの生長に対する光要因の影響を庇陰格子を使って調べたら, 庇陰度の増加とともに重量生長は急激に低下し, 伸長生長は極端な庇陰の場合をのぞぎ大差なかった. また, 実測された生産機能と. 観測された光•温度要因とを結びつけて算出した重量生長は生長の実測から得られた値と一致して小個体ほど非常に小さかった. これらのことから, 群落内における同種間競争において光要因が一つの決定的役割を果すことを確証した.

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