著者
山本 和英 隅田 英一郎
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.3-28, 1999
被引用文献数
2

機械翻訳では目的言語で必須格となる格の人称と数を補う必要がある。本論文では、省略補完知識の決定木による表現、及び帰納的に機械学習することによって日本語対話文の格要素省略を補完する手法を提案する。本研究では形態素分割され、品詞、省略情報が付与された任意のコーパスとシソーラスのみを用いて行なう。決定木学習には、内容語の意味属性、機能語の出現、言語外情報の3種類の属性を使用する。未学習文に対してテストを行なった結果、ガ、ヲ、ニの三つの格で照応的な省略の補完を十分な精度で行なうことができた。またガ格と二格に対しては人称と数の補完にも有効であることを確認した。ガ格に関して、処理の有効性を学習量、話題依存性、使用属性との関係の三点から実験し、以下の知見が得られた。 (1) 当該問題に対する決定木学習量は全体として10<SUP>4</SUP>~10<SUP>5</SUP>事例で十分である。この時の補完精度の上限は80%~85%と予想される。 (2) 対話の話題が既知もしくは予測可能な時は、その話題のみのコーパスによる学習が最善である。話題が未知の場合は、可能な限り広範な話題に対して学習するのが最も効果的である。 (3) 学習量増加に伴い、決定木には機能語などの話題に依存しない属性が多く採用される。

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