著者
佐々木 英継 佐野 隆志 小山 勝一 阿部 正和
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.402-409, 1975

肥満の病因論の観点から, 肥満における代謝異常と脂肪細胞の形態的変化との関連性を検討することが本論文の目的である.<BR>ヒトの脂肪細胞の形態的変化を観察する目的で, 手術時に得た腹壁皮下脂肪組織片を2%四酸化オスミウム液を用いて脂肪細胞を分離固定し, 脂肪細胞の数と大きさを決定した.対象者の脂肪細胞の数は, 体脂肪量を脂肪細胞の脂質含量で割ることによって求めた.体脂肪量はMartinssonの用いた式を利用して計算によって得た.その結果, 軽度および中等度の肥満は, 脂肪細胞の大きさとの関連があるという成績を得た.<BR>なお, 脂肪細胞の大きさから肥満を分類すると, 2つのタイプに大別された.その一つは<BR>脂肪細胞の肥大型であり, 他は正常型であった.後者は肥満の発症が幼若年代であり, 脂肪細胞の数の増加していることが明らかになった.脂肪細胞肥大型肥満では, 脂肪細胞正常型肥満とは対照的に, ブドウ糖負荷後の高インスリン反応, 耐糖力低下および空腹時血中遊離脂肪酸の増加を伴っていた.<BR>脂肪細胞の肥大と高インスリン反応および代謝異常との因果関係については不明であり, 今後の検討を要するが, 目下のところでは脂肪細胞の肥大は, 過剰に分泌されたインスリンの作用によってひき起こされた2次的なもののように思われる.

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