著者
武藤 学
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.S61-S66, 2005

中・下咽頭癌の多くは嚥下障害などの自覚症状を伴って進行した癌で発見され、侵襲の大きな治療が余儀なくされてきた。われわれは、食道癌と頭頸部癌が重複するfield cancerization現象のメカニズムをアルコール代謝酵素の遺伝子多型の面から解析し、アルコールの第一代謝産物であるアセトアルデヒドの慢性的な蓄積が究極の原因である可能性を突き止めた。さらに、新しい内視鏡技術: narrow band imaging (NBI) を応用することで、これまで発見が困難であった中・下咽頭の表在癌の早期発見が可能であることを明らかにした。今後、中・下咽頭癌のハイリスク群がさらに絞り込まれ、これらの癌がいわゆる表在癌の段階で発見されて予後が改善されるばかりでなく、病気の進行や侵襲の大きな外科手術で発声や嚥下の機能障害が余儀なくされ日常生活で苦しむ患者が減少することを期待する。

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