著者
岸本 麻子 浜野 巨志 南 豊彦 多田 直樹 中川 のぶ子 井野 千代徳 山下 敏夫
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.326-330, 2002

反復性の耳下腺腫脹を主訴とした症例の中でも、アレルギーによるものは少ない。その中で、著者らは花粉症に関連したアレルギー性耳下腺炎を経験した。症例は38歳の女性で、花粉症により鼻閉が出現した後にしばらくすると左耳下腺が腫脹するという症状を認めた。患側の耳下腺から流出した唾液中には好酸球が多数認められ、アレルゲン検査ではスギ、ヒノキ、ブタクサが陽性であった。また、耳下腺造影ではステノン管の著しい拡張を認めた。本症例に対し抗アレルギー剤などによる治療を行い、今日まで約4年間にわたり良好なコントロ-ルが得られている。以上の経過より、この疾患の発生機序として導管の拡張によるアレルゲンの逆流を考えた。すなわち、鼻閉が出現した後にしばらくして耳下腺が腫脹する事実から、口呼吸により吸い込んだアレルゲンが口腔内に貯留して拡張した導管から逆流することにより耳下腺炎を生ずると考察した。
著者
西郡 聡
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.712-727, 1990

スタックス製SR-A Professionalヘッドホンを使用して新しい高周波聴力検査システムを開発した. 正常者, 騒音下従事者, ストマイ使用者に対して高周波聴力検査を行い以下の結果を得た.<BR>1. 正常者の高周波音域の聴力閾値は周波数が高くなるにつれて, また加齢が進むにつれて上昇する. 同一周波数における加齢による聴力閾値の上昇の度合は, 周波数が高くなるほど大きかつた. また年齢と聴力との相関係数も低周波音域に比して, 高周波音域では, より高い値を示した.<BR>2. 騒音下従事者の高周波聴力閾値は正常人と較べて有意に上昇していた. またそれらのうち8kHzまではほぼ正常と考えられる者でも, 高周波聴力閾値は正常人と較べ有意に上昇していた.<BR>3. ストマイ使用症例34例において, ストマイ使用前後で高周波聴力閾値のみが高度に上昇したストマイ難聴の2症例を早期に検出することができた. 残る32例は聴力閾値に変動を認めなかつた.<BR>結論として, 高周波聴力検査は騒音や薬物による聴力障害の早期発見に有用であると考えられた.
著者
梅田 悦生 植松 美紀子 吉岡 博英
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.847-852, 1989

スキューバ・ダイビングの普及とともに, ダイビングによって生じた疾患で外来を訪れる症例が増えてきた. その代表的なものは鼓膜損傷と滲出性中耳炎であり, 直接的な原因として耳管の機能障害があげられる. ダイビングでは潜降中にバルサルバを絶えず行い (耳抜き), 中耳腔の気圧を水圧と同調させる必要があるが, この操作が耳管の機能障害により拙劣であると耳痛を生ずる. 加えて, 潜降中の耳抜きが十分にできていない場合には, 浮上に際して耳痛やめまいが誘発され (リバース・ブロック), 重大な事故に結びつく可能性がある. 著者らが行つた73人のダイバーの集団検診では, 実にダイバーの3人に1人が常に耳抜きが困難であるという検診結果が得られた. さらに, 耳抜きが困難である群では, 耳抜きに問題のない群に比べてアレルギー性鼻炎の有病率が高い傾向がみられた.
著者
Susumu Yasumasu
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.13, no.Supplement1, pp.143-151, 1967 (Released:2013-05-10)
参考文献数
32

The author have been studied the nucleic acids and vitamin Bi in the organ of Corti following the sound stimulation. The intense sound stimulation damaged the hair cells, especially the outer hair cells, and nucleic acids decreased remarkably. The distribution of vitamin B1 in the organ of Corti exists in stria vascularis, basilar membrane and hair cells. Vitamin Bt in the same places was decreased by the intense sound stimulation. By the administration of vitamin B1, the damages of hair cells, nucleic acids and Preyer reflex was a little.
著者
坪井 康浩 東野 哲也 牛迫 泰明 森満 保
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.717-725, 1996

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.
著者
竹内 裕美 樋上 茂 田中 弓子 山本 祐子 生駒 尚秋
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.S134-S137, 2000

鼻腔通気度検査は、鼻腔の開存度の客観的評価法として臨床で広く使用されている。通常、測定結果は、正常者から得られた正常値と比較して評価される。一方、左右鼻腔の鼻腔抵抗が経時的に変化する生理的現象は、nasal cycleとしてよく知られているが、鼻腔通気度検査で得られた鼻腔抵抗値をnasal cycleを考慮して検討した報告は少ない。本研究では、47人の20歳代の健康成人を対象として、1時間ごとに7時間にわたり、anterior法 (ノズル法) で鼻腔抵抗を測定した。総鼻腔抵抗の変動幅 (最大値と最小値の差) は、片側鼻腔抵抗の約1/4であったが、平均0.1Pa/cm<SUP>3</SUP>/sの変動があった。また、1時間前の鼻腔抵抗を100とした場合の変化率は、総鼻腔抵抗では平均22.8%であり片側鼻腔抵抗の変化率の約1/2であった。本研究の結果から、総鼻腔抵抗値へのnasal cycleの影響は片側鼻腔抵抗に比べると少ないが、鼻腔通気度検査の評価に影響を与えるには十分なものであることが明らかになった。
著者
高畑 淳子 松原 篤 池野 敬一 新川 秀一
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.269-275, 2002

近年、好酸球浸潤の程度が鼻内ポリープの再発に深く関与すると考えられてきている。今回、われわれはポリープと篩骨洞粘膜における好酸球と肥満細胞の浸潤が慢性副鼻腔炎の予後にどのような影響を及ぼすかについて、形態学的に詳細な検討を行った。慢性副鼻腔炎の鼻内視鏡手術初回手術例21例を対象として、手術時に、ポリープと篩骨洞粘膜を採取した。活性化好酸球、肥満細胞を免疫組織化学的に染色し、各々の部位における陽性細胞数を算出した。予後判定には術前術後の副鼻腔CT陰影をスコア化したものから改善度を求め、活性化好酸球、肥満細胞の浸潤程度と比較検討した。その結果、篩骨洞粘膜への活性化好酸球浸潤の程度と術後の改善度との間において有意な負の相関 (回帰分析:p&ge;0.05) が認められた。このことから、篩骨洞粘膜における活性化好酸球浸潤の程度が最も予後を反映することが示唆された。
著者
彭 解人 程 雷 黄 暁明 三好 彰 陳 潔珠
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.609-623, 1998

上咽頭癌 (nasopharyngeal carcinoma: NPC) は中国では最も多い悪性腫瘍の一つである。疫学的には広東省を中心とする中国南部の住民に多発する傾向がある。疫学的特徴としては、著しい地域集中性、群体易感性と家族集中現象および発癌率の一定性がみられる。病因学研究では、発癌の要因にEBウィルスの関与をはじめとする生活環境因子の影響が強い。中国におけるNPCと遺伝子との関連性について、癌遺伝子ras、c-myc、c-erB-2と癌抑制遺伝子RB、p53、p16などが注目されている。なお、遺伝子TX の発現に関して検討した。早期診断について、1986-1995年、中山医科大学癌センターは広東省のNPC高発生地域で10万人の住民を対象として集団健診を行った。健診の結果に基づき、NPC高発生地域での癌健診方式を提案し、NPCの前癌状態、前癌病変の判断基準を定めてきた。臨床分類に関しては、1992年に中国は新たなNPC臨床分類法を出した。この分類法はUICC分類法 (1996、改訂案) と比較して、両分類法とも大体一致しているが、NPC臨床分類法のほうが癌の進展と浸潤程度をより重視し、TN 分類についても合理性が高い。治療の面では、NPCは放射線感受性の高いものが多いので放射線治療が主体となる。多分割照射法・加速多分割照射法および個体化治療方案も重視されている。三次元照射治療はNPC放射線治療の技術で最も技術的に進歩をとげたものである。放射線療法に化学療法、外科治療を併用することで、生存率とQOLの改善はより効果的になる。前癌病変阻害剤と遺伝子治療に関する研究は重要な課題であり、新たな治療法として期待が持たれている。
著者
森満 保 平島 直子 松元 一郎
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-30, 1973

In 1971 Morimitsu et al reported on the effects of sodium chloride crystals administered on the round window membrane upon the cochlear microphonics which were recorded from the basal turn of the cochlea of guinea pigs with differential electrodes technique. The amplitude of CM after the administration of NaCl-crystals showed changes in a regular pattern which is composed of an initial overshoot, a primary decrease, a recovery and a secondary decrease. It was considered that the action of NaCl-crystals should be affected by the permeability of the round window membrane, the production and absorption of the inner ear fluids and the vulnerability of the organ of Corti by the biophysical changes of the fluids.<BR>In order to clarify the mechanism ofthese changes of CM and the effects of sympathomimetic and sympathoplegic drugs in the cochlea, the changes of CM modified by NaCl-crystals were observed after the intravenous injection of the following drugs; norepinephrine, isoproterenol, epinephrine, phenoxybenzamine and propranolol. The &alpha;-receptor stimulant (norepinephrine) prolonged the initial overshoot and depressed the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade, of the secondary decrease. The &beta;-receptor stimulant (isoproterenol) depressed the grades of both decreases and therefore the recovery after the primary decrease was complete. The &alpha;-receptor blockade (phenoxybenzamine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot, and depressed the grades of both decreases. The &beta;-receptor blockade (propranolol) acted to depress the grade of the primary decrease of CM, but did not influence the grade of the secondary decrease. The &alpha;-&beta;-receptor stimulant (epinephrine) caused a slight decrease of CM prior to the initial overshoot and influenced so as to depress the both decreases. The action of epinephrine showed a slight resemblance to that of the 13-receptor stimulant. The results obtained showed that the &beta;-receptor stimulant and the &alpha;-receptor blockade have a favorable effect on the reactivation of the homeostatic processes govering the labyrinthine fluids and have a effect to minimize the irreversible damage of the organ of Corti occurring after the placement of NaCl-crystals. Considering different actions between &alpha;-receptor acting drugs and the &beta;-receptor acting drugs, it is suspected that the sympathetic nerves in the cochlea also consist of the a and &beta;-receptor which act in a sense antagonistic. As the several possible mechanisms of the actions of these drugs, an effect on the permeability of the blood vessels of the cochlea and of the round window membrane besides an effect on the cochlear blood flow was considered. Furthermore, an effect on the sympathetic nerve which was recognized in the basilar
著者
前山 忠嗣 前原 法文 進 武幹
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.581-588, 1993

慢性副鼻腔炎患者20例に「オースギ小青竜湯エキスG」を投与し, その有効性および安全性について検討し, 次のような結果を得た.<BR>1) 有効率 (やや有効以上) は短期 (3~6カ月) 投与群では75%, 長期 (7~12カ月) 投与群では92%であり, 全体としては85%であつた.<BR>2) 他覚所見より自覚症状の改善率の方が高かつた. とくに鼻閉, 鼻汁, 後鼻漏の改善率が優れていた. 嗅覚障害に対してはあまり効果がなかつた.<BR>3) 副作用は認められなかつた.<BR>4) 本剤は副鼻腔炎の治療に有用であると考える.
著者
岸本 麻子 金 義慶 南 豊彦 中川 のぶ子 多田 直樹 井野 千代徳
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.97-103, 2006

真性唾液過多症の1例を報告した。患者は24歳の女性で15歳頃より唾液過多を自覚していた。今日まで心因性のものとして加療されてきたが効果なく当科を紹介受診した。安静時唾液量は5分間で9-10mlと非常に多く、RI検査では両側の顎下腺で集積が低下していた。これは分泌に集積が追い付かない現象と理解した。唾液腺造影ではワルトン氏管の拡張が認められた。これは恒常的に多量な唾液が分泌されての現象ととらえた。顎下神経節をブロックして唾液量が著しく低下したことより顎下腺が責任腺と考えた。治療として抗ヒスタミン剤、マイナートランキライザー、H1受容体ブロッカー、カルバマゼピンを選択し投与した。結果、カルバマゼピンにてやや有効と判定された。最終的に左顎下腺摘出術を行ったが、結果は予想以上に良好で手術後49日目の安静時唾液量は1.5mlで、自覚的にも有効と判定された。
著者
賀数 康弘 福島 淳一 久保 和彦 小宗 徳孝 門田 英輝 君付 隆
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.30-36, 2008

外耳道から中耳に及ぶ扁平上皮癌に,乳突洞削開による腫瘍摘出術と放射線治療を行った後, 5年が経過して気脳症を発症した症例を経験した。髄膜炎と水頭症を併発し,意識レベル低下が見られて危篤状態となったが,保存的治療で症状は軽減した。最終的に内耳を含めて側頭骨腐骨部分を摘除し,死腔と硬膜損傷部位を遊離腹直筋弁で充填,閉鎖した。現在まで腫瘍も髄液瘻も再発していない。側頭骨へ照射を行った後に生じるさまざまな合併症の中に髄液漏や本疾患も含まれる。本疾患発症の場合,髄膜炎や脳炎など重篤な頭蓋内疾患を合併して致死的経過をたどる場合もあり,照射を行った患者に対する経過観察においては癌の再発のみならず本症例のような合併症にも留意すべきであると考えられた。
著者
武藤 学
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.S61-S66, 2005

中・下咽頭癌の多くは嚥下障害などの自覚症状を伴って進行した癌で発見され、侵襲の大きな治療が余儀なくされてきた。われわれは、食道癌と頭頸部癌が重複するfield cancerization現象のメカニズムをアルコール代謝酵素の遺伝子多型の面から解析し、アルコールの第一代謝産物であるアセトアルデヒドの慢性的な蓄積が究極の原因である可能性を突き止めた。さらに、新しい内視鏡技術: narrow band imaging (NBI) を応用することで、これまで発見が困難であった中・下咽頭の表在癌の早期発見が可能であることを明らかにした。今後、中・下咽頭癌のハイリスク群がさらに絞り込まれ、これらの癌がいわゆる表在癌の段階で発見されて予後が改善されるばかりでなく、病気の進行や侵襲の大きな外科手術で発声や嚥下の機能障害が余儀なくされ日常生活で苦しむ患者が減少することを期待する。
著者
山下 道子 花井 敏男 中川 尚志 小宗 静男
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-9, 2013

近年、新生児聴覚スクリーニングの導入により難聴児の療育の開始時期が早期化している。しかし、依然として療育開始が 3 歳以降となる症例も存在する。1999 年度から 2011 年度までの13 年間で当センターに3 歳以降に初診し療育を開始した 52 例について検討した。後天性難聴以外の例では、難聴に気付く時期が遅れており、難聴の早期発見のためには乳幼児の保健や保育にかかわる人に乳幼児難聴について知ってもらい、難聴を疑うこと、聴力検査を受けてもらうことが大切であると考えられた。1 歳半健診・3 歳児健診の聴覚検診の囁き声検査は重要であり、福岡市においても今年度から導入され、その効果が期待される。
著者
久保 和彦 佐藤 方宣 小宗 静男
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.122-127, 2013

メニエール病治療薬であるイソソルビドは、苦く特有な味であるために、服用に困難を極める弱点がある。これまで多様な方法が試みられたが、良好な服用法は確立されていない。その服用感を改善するため、健常人 33 名にイソソルビド+ある種の溶液の組み合わせ ( 1 : 1 混合) を 6 種類試飲してもらい、服用しやすさを 5 段階評価で検討した。原液の味に関しては苦味の評点が高かった。服用感については、原液の平均評点が 3.18 だったのに対し、オレンジジュースは 4.12、リンゴ酢は 3.12、炭酸水は 3.30、コカ・コーラ<sup>TM</sup> は 3.76、ポカリスエット<sup>TM</sup>は 3.61、緑茶は 2.82 と、オレンジジュース、コカ・コーラ<sup>TM</sup>、ポカリスエット<sup>TM</sup>は有意に服用しやすさを改善したが、緑茶は逆の傾向が見られた。患者がイソソルビドの服用しにくさを訴えた場合は、オレンジジュースかコカ・コーラ<sup>TM</sup>、ポカリスエット<sup>TM</sup>で倍量希釈することで服薬コンプライアンスを上げられる。
著者
安達 一雄 梅崎 俊郎 宮地 英彰 藤 翠 小宗 静男
出版者
JIBI TO RINSHO KAI
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.S229-S234, 2010

嚥下内視鏡検査は嚥下機能を評価するにあたり、さまざまな利点を有している。しかしながら、その手技は一つの重大な欠点を有する。われわれは嚥下した瞬間は映像を見ることができない。いわゆるホワイトアウトといわれるまっ白い映像しか見えない。そこでわれわれはホワイトアウトの瞬間の嚥下機能を評価するために同時に嚥下圧を計測してみることとし、一側性声帯麻痺において甲状軟骨形成術前後の嚥下圧について評価した。嚥下圧は術後明らかに改善しているにもかかわらず、同時記録している嚥下内視鏡検査ではホワイトアウトが生じるのみで、何ら変化を認めなかった。嚥下内視鏡検査にはホワイトアウトという大きな欠点があるが、嚥下圧の同時記録により、十分に補えるものと考えられる。