著者
隅田 祥子 張 元 渡部 和彦 浦辺 幸夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.144-144, 2003

【はじめに】着地衝撃には幅広い周波数が含まれており、人間の感覚として、骨を通じて生体内に伝播される低周波帯の振動は、皮膚や脂肪、筋肉組織に吸収されやすい高周波帯の振動よりも不快であり、着地衝撃の大きさが同一であっても含まれる周波数成分によって感じ方が異なると考えられている(西脇,2000)。これまでに乾燥脛骨を用いて、叩打部位による一定の振動モードが認められることが報告されている(Nakatsuchi et al.,1996)。本研究では生体において、ジャンプ着地によって足部から入力される衝撃が脛骨の各部位にどのような周波数帯で伝播されるのか、加速度の周波数解析を用いて検討した。【対象】本研究の趣旨に同意が得られ、下肢に既往歴をもたない男性6名(平均年齢20.5±0.8歳、身長168.0±6.4cm、体重57.8±7.6kg)とした。【方法】脛骨の内果および内側顆、前縁上の4箇所(脛骨近位80%・60%・40%・20%)、計6箇所に加速度計(MA3-10AC、MicroStone社製)を装着し、床反力計(5007Y15、KISTLER社製)上で最大努力によるジャンプから左片脚着地を行った。この時の床反力および各部位の脛骨に対して長軸方向の加速度を測定・記録し、MemCalc/Win(周波数解析ソフト、諏訪クラスト社製)による周波数解析を行った。西脇(2000)は着地時の加速度の周波数分析を用いてソール素材の違いによる衝撃緩衝能の評価をし、この評価がより人間の感覚に近い評価であることを確認しており、素材の違いにより15-35Hzの低周波帯でのパワースペクトルの減衰量に大きな違いがみられたとしている。このことから本研究では評価指数として15-35Hzのパワースペクトルの面積(PSD)を用いた。PSDの各部位間での有意差は、Wilcoxonの符号付順位検定を用い危険率5%未満で求めた。【結果】測定部位ごとのPSDは、内果では23.77±20.73、脛骨近位80%では31.93±14.82、脛骨近位60%では44.47±17.34、脛骨近位40%では86.52±42.69、脛骨近位20%では51.01±31.04、内側顆では53.96±43.47であり、個々により値の大小はあるものの、脛骨では全対象において近位40%で最も大きな値を示した。さらに、脛骨近位40%でのPSDは、内果、脛骨近位20%および80%でのPSDよりも有意に大きな値であった。【考察】本研究から脛骨に対するジャンプ時の着地衝撃の垂直成分は、脛骨近位40%に低周波成分が集中していることが認められた。このように骨を通じて伝播されやすい成分が多く検出される部位は、従来より指摘されている跳躍型疲労骨折の好発部位(脛骨中央部前方)に一致することが示された。このことから両者の間には因果関係があるかもしれない。

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