- 著者
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石井 博之
金子 純一朗
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2003, pp.C0172-C0172, 2004
【目的】<BR>青年海外協力隊隊員としてマレイシアで2年間、青年海外協力隊調整員としてアフリカのマラウイで2年間の活動の中から発展途上国で活動するためにはより現地に適応した技術(適正技術)をさらに見出していく必要がある。特に医療の行き届かない農村部において、ポリオ発症後の下垂足や脳卒中や脳性麻痺による軽度の尖足が日常生活の歩行を妨げている障害者を多く目にした。その為強い強制力は必要としない短下肢装具の必要性を感じた。また装具作製にあたっては加えて現地で容易かつ安価に素材が入手でき、また作られたものが現地の気候の中でも快適な素材で作られていること、更に作製に高度な技術を必要とせず、かつ現地に既にある技術を活用できる必要性を鑑み、途上国の多くで利用されている腰巻き(サロン)の素材である綿の布を使用し、また、途上国でよく見かける縫製職人の技術で作製可能かつ安価に作製可能な短下肢装具の開発をした。また、この装具の強制力を把握するため、他の装具及び裸足との矯正力の比較をおこなった。<BR>【方法】<BR>日本の足袋を参考に基本モデルを作製し、既存の軟性装具を参考に縦方向と8の字にストラップを取り付けた(自作装具)。装具の背屈方向への矯正力を天秤ばかりを応用して実験装置を作製し、計測した。被検者は健常成人12名(平均年齢25.3±2.1才・男性6名・女性6名)。足を実験装置に載せて後方の錘で釣り合いを取り、500gの錘を前方に載せて底屈角度を裸足、自作装具、プロフッター装着にて10回測定した。<BR>統計処理は、装具を要因とした一元配置分散分析および多重比較検討(Fisher's PLSD)にて検討した。なお、有意水準は1%未満とした。<BR>【結果】<BR>装具を要因とした一元配置分散分析及び多重比較検定により、「自作装具」と「裸足」、「プロフッター」と「裸足」間で有意な主効果が得られた。また「自作装具」と「プロフッター」間では有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR>今回作製した装具は一般の軟性装具とほぼ同程度の矯正力があることが示唆された。しかし今回は静的場面での矯正力の検討のみであり、今後は動的場面での矯正力の把握が必要不可欠である。また、ストラップの取り回しや素材の違いによって矯正力や矯正の方向が変わると思われ、今後の研究課題としたい。<BR>【まとめ】<BR>今回、途上国農村部においても作製可能な装具を開発し、その矯正力も確認することができた。今後はさらに耐久性に着眼し、改良を重ねていきたいと考えている。また、完成したものは足のサイズに合わせた型紙を作製し、現地の言葉で書かれた説明文を添えることによりどこでも現地の縫製職人などが作製可能にする予定である。<BR>また、私が国際協力に携わる中で必要と感じた理学療法分野の適正技術は装具だけではなく、今後は車椅子や義肢、座位保持装置などに加え、理学療法手技においても考えていきたい。