- 著者
-
鈴木 誠
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2003, pp.C0188, 2004
【はじめに】現在、某中学校サッカー部にてメディカルサポート活動を行っている。試合を前にして選手が筋肉の疼痛や張り、それに伴う関節可動域や筋力の低下といった筋肉痛と思われる症状を訴えることがあり、筆者が対応している。中学生という発育の加速期でもあるこの時期には、筋肉や筋腱付着部にトラブルを起こしやすく、スポーツ障害を招きやすいという事は過去の報告にも数多くある。しかし、筋肉痛に注目した中学校サッカー選手の報告は少ない。今回の調査では筋肉痛を訴えた選手の傾向に着目した。<BR>【目的】筋肉痛を訴えてきた中学校サッカー選手の傾向を分析する。また、中学生年代のサッカー選手に理学療法士(以下、PT)が関わる際の一考察を示す。<BR>【対象及び方法】対象は、2002,2003年の2年間で某中学校サッカー部に所属していた選手46名(12歳から15歳)のうち、公式戦(5大会)及び練習試合(1試合)において筋肉痛を訴え、メディカルサポートを行なった選手5名である。当チームは2002,2003年の2年連続県大会出場の実績を有する。調査は、事前にチェックリストを作成し選手にメディカルサポートを行った際、記入した。そのリストを、筋肉痛を訴えた選手の(1)ポジション(2)部位(3)学年についてそれぞれ分類した。<BR>【結果】(1)ポジションでみると、ディフェンダー(以下、DF)が4件,ミッドフィルダー(以下、MF)が1件であった。(2)部位は、腰部が2件,大腿部が5件であった。(3)学年においては、中学3年生が4件,中学1年生が1件であった。<BR>【考察】今回の結果では、DFの筋肉痛の訴えが多く、部位は腰部から下肢に集中していた。また、中学3年生の訴えが大半を占めていた。サッカーという競技の中で、DFは守備を中心とし、ボディーバランスを保ちながらボールを奪い守備を行なわなければならず、個人対個人の局面においては自身の意志とは別の、相手に応じた動きを強いられる事が多いという動作特性がある。このような動作は、筋肉が伸張しながら張力を発揮する伸張性収縮の連続であり、これが試合中常に繰り返されていると考えられる。筋肉痛は筋肉の伸張性収縮運動時に発生すると言われている。よって、DFの動作特性から筋肉への過剰な刺激が負担となった結果、筋肉痛を誘発しているのではないかと考えられる。また中学3年生という学年は発育の加速期でもあり、骨の伸びに対し筋肉や腱の成長が伴わず相対的に柔軟性が低下する時期でもあることも、原因として考えられる。そこでPTが関わる際には、ポジションごとの動作特性を把握した上でのケアが必要であると考えられる。また、中学生年代の選手にはトレーニングはもちろんのこと、ストレッチやマッサージ、クーリングダウンといった日頃のケアの実施と啓蒙活動が必要ではないかと考えられる。今回の研究は症例数が少ないため、今後さらなる調査研究が必要だと考えられる。