著者
結城 恵 花崎 加音 西村 文江 宮之原 清江
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.D0550-D0550, 2004

【はじめに】2002年4月より開胸・開腹術後の患者が早期リハビリテーション加算の対象に含まれた。当院においても理学療法士が加わり2003年2月より心臓血管外科手術に対するリハビリテーションプログラムが運用となった。そこで、対象の手術状況や合併症などとプログラムの進行状況について調査し検討を行ったので報告する。<BR>【対象と方法】2003年4月から10月までに開胸術(冠動脈バイパス術、弁置換・形成術、胸部大動脈置換術、先天性心疾患開心術)を施行した111例、年齢68±12歳、男性64例、女性47例を対象とした。開胸術後プログラム期間の14日+3日(allowance)でADL自立した症例を順調群、それ以上の日数を必要とした症例を遅延群と分類し、年齢、手術状況、術後合併症、随伴症および進行状況を比較検討した。なお、解析はt-検定とSpearmanの順位相関を用い危険率5%未満を有意水準とした。<BR>【結果】全症例中、順調群は57例(51%)、遅延群は54例(49%)であった。進行状況において端坐位までの日数は順調群3.4±1.0日、遅延群8.8±7.7日。起立開始までの日数は順調群3.8±1.2日、遅延群9.8±9.4。術後在院日数は順調群12.9±2.2日、遅延群31.7±15.3日であり、それぞれ有意に遅延群が長かった。平均年齢は順調群62.9±11.2、遅延群72.9±9.6であり年齢と術後在院日数には有意な相関がみられた。緊急手術は順調群6例(5%)、遅延群26例(23%)であったが、緊急手術と術後在院日数に有意差は認められなかった。また、緊急例は術後紹介で平均10.4±5.4日間後の紹介状況であった。術中出血量は順調群1130.1±1004.1、遅延群1971.8±1724.0であり有意に遅延群が多く、術後在院日数とも有意な相関を認めた。術後合併症では不整脈は順調群26%、遅延群65%、心合併症は順調群7%、遅延群31%、呼吸器合併症は順調群7%、遅延群41%、その他(消化器・腎・感染・脳合併症など)はそれぞれ順調群が少なかった。随伴症は、順調群と遅延群においてほぼ同数であった。<BR>【考察】今回の検討より遅延例の特徴は年齢層が高く、術中出血量が多く、術後合併症が多かった。在院日数短縮が進められているなか、高齢者、術前、術後ともに多種多様な合併症が存在する術後遅延例が約半数を占めていた。今後、プログラム進行順調群や遅延群それぞれの日数や特徴を踏まえ、順調群ではより早期の退院を目指し、遅延群では合併症の発症に注意し、その時期・状態に合わせ個々のプログラムを作成し効率的に施行できるよう基準の再設定を行い質の高い治療を提供していきたい。また、生活習慣病を多く有する対象であるため、退院後の生活指導や患者教育・運動療法指導など包括的心臓リハビリテーションに向け取り組んでいきたい。

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