- 著者
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平石 恒男
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2005, pp.E0989-E0989, 2006
【目的】<BR>脳卒中片麻痺患者にとって、床上での立ち座りは困難な動作の一つである。文献には立ち上がり方法についての記載は多いが、一人で立ち座りができるかどうかを予測する方法を述べているも見当たらない。そこで、今回、片麻痺患者の床上での立ち座りと立位、歩行能力の関連から立ち上がり能力を簡便に判定する方法を検討した。<BR>【方法】<BR>対象は当院に入院中の脳卒中片麻痺患者54名、男34名、女20名、平均年令65.4才、ブルンストローム下肢ステージI,II―5名 III,IV―34名 V,VI―15名 <BR>方法は立位能力を、立位から床への上肢リーチ動作を5段階、歩行能力も5段階に分け、床上での立ち座り動作の可否から関連を検討した。立ち座りについては口頭指示、台の使用を可とした。<BR>【結果と考察】<BR>1.立位姿勢から床への上肢リーチ動作と床上での立ち座りについて、<BR> 立位から手掌が床に着けられたものは37名中32名が自力で立ち座りができた。一方、それができなかった17名は、一人が台を使用してできただけだった。また、床への立ち上がりと下り動作の難易度で、前者は37名中26名が可能であったのに対して、後者が35名と、下り動作の難易度は、ほぼ、床へ手掌が着けられる動作と同じと云えたが、立ち上がり動作は、それに比較して、難しい動作であることが分かった。しかし、立ち上がりに台を使用することにより37名中32が可能となった。したがって、片麻痺患者の立位から床へ手掌が着けられる上肢のリーチ動作能力は床からの立ち上がり、床への下り動作が自力で可能か否かの指標になると考えられた。<BR>2.歩行能力と床上での立ち座りについて<BR> 室内自立歩行群19名中18名が床からの立ち座りが一人で出来、台の使用者は1名のみであった。しかし、監視歩行群では一人で立ち座れたものは半数に止まっていた。このことから、歩行の自立は台などの立ち上がり時の補助用具なしでの、自力での立ち座りの可能性が指摘された。一方、車椅子使用者でも監視歩行ができることにより、一人で床への乗り降りができるものがあることが分かった。<BR>【まとめ】<BR> 今回の研究から片麻痺患者の立位姿勢からの床へのリーチ動作と歩行能力は床上での立ち上がり動作に関連があることがわかった。特に立位姿勢から床への手掌の接地の可否は一人で床上で立ち上がりが出来るか否かの目安になると思われた。