著者
田中 康雄 遠藤 剛 山本 良一 岡邨 直人 関根 裕之 大野 健太 山本 智章
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P1458-C3P1458, 2009

【はじめに】昨年報告した平成19年度の少年野球検診の結果より、成長期投球肘障害の要因として少年野球選手の身体機能面だけでなく、指導方法や大会運営など選手を取り巻く環境の問題が考えられた.今回、投手に絞ったメディカルチェックを行なうと共に、指導者に対するアンケート調査と大会中の各試合における投球数の調査を実施した.その結果から障害予防活動の課題・展望について報告する.<BR><BR>【方法】対象は学童新人野球大会に参加した51チーム中検診を希望した39チームの投手74名(5年生63名、4年生10名、3年生1名)である.大会会場にて医師、PTによる直接検診として四肢の理学所見および肘関節の超音波診断を行った.異常ありの投手に医療機関の受診をすすめた.検診後に問診票を配布し、身長、体重、野球開始時期、投球側、練習時間、疼痛の有無、ポジション、痛みがある時の対応などについて調査した.また指導者に対してアンケートを配布し、野球経験、指導経験、練習時間、検診の必要性、投球制限、日本臨床スポーツ医学会の提言の認知などについて調査し、大会期間中の投手の投球数報告を義務化した.<BR><BR>【結果】直接検診で異常ありの投手は74名中23名(31.1%)でこのうち12名(52.2%)が医療機関を受診し、そのうち11名に内側型野球肘が確認された.問診票は74名中59名(79.7%)から回答があり、身体に疼痛を訴えている選手は35人(59.3%)で、その中で医療機関を受診しているのは2名(5.7%)であった.複数回答による疼痛部位は、肘25名、肩13名、踵7名などであった.また指導者のアンケートでは20名(51.3%)から回答があり、年齢42.9±6.8歳、指導経験7.1±6.5年で日本臨床スポーツ医学会の提言を知らない指導者は15名(75%)であった.今回から採用されたコールドゲームを含めた大会全102試合での投球数は平均73.5球であったが、コールドゲームを除いた65試合の平均投球数は94.0球で投手交代の無かった試合での一人あたりの投球数は平均87.8球であった.<BR><BR>【考察】少年野球検診の目的は障害の早期発見であるが、投手を中心に直接検診を実施し、11名(13.9%)の内側型野球肘を発見することが出来た.一方問診票の結果から、痛みを有している選手が35名で、そのうち医療機関へ受診しているケースは2名と極端に少なく、成長期投球障害が進行した状態で始めて医療機関を受診する可能性があるため、早期から障害予防に取り組む必要性がある.今回の投球数カウントではコールドゲームを除いた一人投手試合では平均87.8球と日本臨床スポーツ医学会の提言における50球という制限をはるかに越えている.今後大会準備委員会への医療側からの参加、投球制限などの特別ルールの提案など障害を予防するために現場と医療側との連携が求められる.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 4 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? 少年野球選手における投球肘障害の実態調査と予防のための取り組み(田中 康雄ほか),2009 https://t.co/OlxligYl1T 【はじめに】昨年報告した平成19年度の少年野球検診の結果より、成長期投球肘障害の要因…
こんな論文どうですか? 少年野球選手における投球肘障害の実態調査と予防のための取り組み(田中 康雄ほか),2009 https://t.co/OlxligYl1T 【はじめに】昨年報告した平成19年度の少年野球検診の結果より、成長期投球肘障害の要因…
こんな論文どうですか? 少年野球選手における投球肘障害の実態調査と予防のための取り組み(田中 康雄ほか),2009 https://t.co/a46CQcIMXF
こんな論文どうですか? 少年野球選手における投球肘障害の実態調査と予防のための取り組み(田中 康雄ほか),2009 https://t.co/a46CQcIMXF

収集済み URL リスト