著者
瀬川 栄一 静間 久晴 柏木 宏彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1120-C4P1120, 2010

【目的】<BR>近年、理学療法士はスポーツ現場より様々な立場での介入を求められることが増加傾向にある。その中でもメディカルスタッフとしてアスリートに対するコンディショニングサポートを要求されることが多い。スポーツ現場においてコンディショニングの用語の定義は難しく、「技術面」、「体力面」、「栄養面」、「用具」など総合的な意味合いで使用されることが多い。中野によれば、競技者のコンディショニングでは、目指す大会期日に照準を合わせてトップコンディショニングになるように準備することを目的とし、選手自らがコントロールしなければならず、選手の主体的なコンディショニング管理はセルフコントロール(自覚的コンディション)が階層的な部分の底辺にあり土台となるとしている。それに対して、理学療法士を含むコーチやトレーナーといった職種のプライマリーケアが競技成績に反映される、とされ重要視されている。本研究においては、2009年5月に行われた水球男子日本代表のワールドリーグアジア大洋州ラウンド遠征に帯同した機会を用いて、競技者の自覚的疲労度と理学療法の介入に焦点をあて関係性を検討する事にした。<BR><BR>【方法】<BR>2009年5月22日~31日においてFINA Water Polo World League 2009 アジア大洋州ラウンドが開催された。日程の詳細は22日~24日(オーストラリアラウンド)、28日~31日(ニュージーランドラウンド)であった。また、ラウンド間の日程は練習を行った。対象は2009年4月に行われた代表選考会により選出され本遠征に参加した男子選手13名、平均年齢22.6±3.18歳。調査期間は2009年5月20日から31日の12日間。理学療法(以下PT)は希望者に対し、夕食後介入した。この間施行したPTは106件あり、処置内容の割合はマッサージ52%、アイシング14%、ストレッチング12%、超音波療法10%、その他12%であった。選手全員は夕食時およびケア対応時に配布された問診表に、疲労・疼痛を感じる部位とその強度を記入した。強度に関しては、疲労を全く感じていない状態を0としてベースラインを設け、疲労は1~3、疼痛は4~6の6段階スコアにて表現した。各選手の訴える身体部位すべてのスコアを合計し、前日との差を求めた。次にそれら全選手11日間分のデータを、前日にPTが介入した群とPTが非介入であった群に振り分け、スコアの合計、延べ人数を算出し比較・検討した。検定にはMann-WhitneyのU検定を用い、有意水準5%にて解析した。<BR><BR>【同意と説明】<BR>対象者には遠征参加時に研究目的・研究内容について十分な説明を行ったうえ同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR>11日間における介入群の延べ人数は62人、合計スコアは-65と自覚的疲労度は減少した。非介入群では延べ人数81人、合計スコアは20という値を示した。2群間において、介入群に有意な疲労度の減少が認められた(p<0.05)。<BR><BR>【考察】<BR>今回、短期間の横断的手法であったものの、理学療法の介入が選手の自覚的疲労度を低下させる結果を得られた。遠征初期では約2週間の国内事前合宿と長時間の移動による影響から不安定な値を示した可能性が考えられた。ファーストラウンドの終了した24日には大会主催の食事会があり、介入する事ができず翌日に疲労度を上昇させた要因と考えた。<BR>セルフコントロールがコンディショニング作りの基礎であると考えるならば、主観的な感覚にアプローチする意義はある。そして、アスリート自身が疲労感を自覚的にとらえることができるような指導を行わなければならない。アスリートの主たる内省報告の内容は「筋肉のハリ」や「痛み」、「違和感」といった抽象的なものが大部分を占めている。それらの要求を軽減させることが選手やチームのコンディショニングの向上につながるであろう。これらはいわゆる遅発性筋痛(delayed on-set muscle soreness: DOMS)に対するアプローチと言い換えられることも考えられ、処置内容の生理学的考察と内省報告との相関を検討することを今後の課題とした。<BR>【理学療法学としての意義】<BR>スポーツの現場からは常に理学療法士としての介入を求められるとは限らない。特に「アスレチックトレーナー」としての介入が一般化してきている。そのうえ合宿や大会期間のみという短期間で「競技成績」や「パフォーマンスの向上」といった、チームに対する貢献度が我々の業務評価につながることもあり、「チーム強化」という目的を意識しなくてはいけない。このような需要にこたえることが理学療法士の社会的地位向上や職域拡大の一助となるであろう。また、自覚的な疲労感を考察することは一般の医療機関における臨床場面においてもフィードバックできる要素と考える。<BR>

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こんな論文どうですか? スポーツ場面における理学療法の介入と自覚的疲労度について(瀬川 栄一ほか),2010 https://t.co/RFGcP424Qk

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