著者
佐伯 武士 浜岡 隆文 栗原 俊之
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48102059-48102059, 2013

【はじめに】 脳内への血液を供給している椎骨動脈の走行は頚椎の横突起にある穴(椎間孔)を貫く様に上行していることから個々の頚椎骨の動きに伴って機械的刺激を受けて血流が変化し、その結果、血流量の著しい低下が起こると脳底動脈系の一過性の血流不全を生じ、目眩やふらつき、意識消失感、霧視などの非特異的な症状を誘発する恐れがある。さらに重篤な場合は脳梗塞の原因になると考えられている(Sorensen,1978)。しかしながら、これまでの頸部回旋運動に伴う椎骨動脈血流変化に関する報告は、症状を有する患者のものが多く、健常者では見解が一致していない(Mitchellら,2004;Zainaら,2003)。 さらに、これまでの研究では超音波診断装置を使用した頸部回旋運動による対側椎骨動脈血流量の変化に着目した研究は多いが、両側椎骨動脈血流量を同時に計測し検討されたものは稀である。 本研究は、頸部の中間位と左右最大回旋位における椎骨動脈の血流状態について、超音波診断装置による片側測定と磁気共鳴血管画像(MRA-TOF法)による両側同時測定を用いて比較検討した。【方法】 健常人男性16名女性7名、年齢20.1±3.9歳、BMI22.2±1.8を対象に、超音波測定検査にて、収縮期最大血流速度(peak systolic velicity:PSV)、拡張期血流速度(endodiastolic velocity:EDV),時間平均血流速度(time average flow velocity:TAV)、血管直径を計測し磁気共鳴血管画像(MRA-TOF法)を用いて椎骨動脈形状変化について測定し検討した。 統計学的検討はBland-Altman plotによる左右誤差の検討、対応のあるt検定を用いて回旋前後の血行動態について検討した。有意水準は5%未満とした.【説明と同意】 被験者には本研究の趣旨を事前に書面にて説明し,同意を得た.本研究は立命館大学びわこ・くさつキャンパス生命倫理審査委員会の承認を得ている。【結果】 頸部中間位における椎骨動脈血管直径および血流量に左側有意な左右差を認めた(左側直径平均:3.84±0.4mm 右側直径平均3.55±0.4 mm) 超音波診断装置による回旋側反対側椎骨動脈血流測定において、頸部中間位と最大回旋位の比較にて、PSV・EDV・TAVにおいて最大左右回旋位に有意な減少を認めた(p<0.05)。 MRA-TOF画像における椎骨動脈血流変化において、最大右回旋位において右椎骨動脈の有意な増加(p<0.05),左椎骨動脈の有意な減少(p<0.05)を認めた。【考察】 本研究において、健常者椎骨動脈は直径・血流量に左右差を生じ、結果頸部回旋運動において、直径が劣位な椎骨動脈は回旋運動による影響を受けにくく直径が有意な椎骨動脈側は回旋運動による影響を受けやすい事が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 頸動脈病変と冠動脈疾患の危険率が相関することは Salonen(1991)によって報告され、頸動脈病変は優れた予知因子であると考えられている(Salonenら1991)。したがって、頚部回旋による椎骨動脈テストが臨床の現場や健康増進分野において簡便なスクリーニングテストとして用いられることで、動脈疾患の早期発見に有用であると考える。そのためには、頸部回旋運動における椎骨動脈血流変化についての科学的な理解が重要である。

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