著者
陳 金娣 新田 静江
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.176-182, 2011

<b>目的</b>&emsp;中国農村部の家族介護を支える体制整備への提言資料を得るために,高齢者の在宅ケアサービスの利用ニーズとその関連要因を明らかにすることとした。<br/><b>方法</b>&emsp;経済発展の速い 1 農村の無年金高齢者102人を対象に,主観的健康感,ADL,慢性疾患と自覚症状の有無,ソーシャルサポート,うつ状態,要介護状態時の意向と在宅ケアサービスニーズを面接調査した。また,ニーズの関連要因をカイ二乗,Fisher の直接確率検定および t 検定,Wilcoxon 順位和検定を用いて分析した。<br/><b>結果</b>&emsp;対象者は73.3&plusmn;5.1歳,子供を4.0&plusmn;1.4人有し,主として配偶者と同居し,親族の仕送りを収入源としていた。慢性疾患と自覚症状を有する者が半数以上,ADL は99.8&plusmn;1.6点,ソーシャルサポートは35.9&plusmn;5.7点,うつ状態は3.9&plusmn;2.7点,75.5%が健康と自己認識し,64.7%は要介護状態になった場合に自宅で暮らす意向があった。在宅ケアサービスは,訪問介護と住込み介護と老人ホーム以外のサービス実施への賛成割合および利用ニーズ割合は高く,無料~安価での利用を希望していた。ニーズとの関連要因は,地域医療機関と ADL,訪問看護と年齢,通所介護と ADL に有意差がみられた。訪問リハビリテーションは有配偶者と自覚症状がない者,訪問介護は慢性疾患がない者,住込み介護は経済的余裕者,老人ホームは有配偶者,通所介護は自覚症状がない者に有意に高かった。<br/><b>考察</b>&emsp;在宅ケアサービスのうち,医療と保健関連サービス利用ニーズが高かったことは,農村新型合作医療保険で医療費控除対象となっていない外来での受診や健康指導&bull;相談への期待の大きさと推察される。住込み介護利用ニーズが経済的余裕者に高かったことは,現状のサービス利用経費は高すぎるものと推察される。老人ホームと訪問リハビリテーション利用ニーズが有配偶者に高かったことは,同居の配偶者への介護負担を考慮した回答と捉えられる。子供の同居率の低い状況下で,要介護状態になった場合に自宅で暮らしたいという大多数の高齢者の希望を叶え,伝統的な老親扶養に基づく家族介護を支えるには,在宅ケアサービス体制の整備が課題と思われる。<br/><b>結論</b>&emsp;中国農村部の高齢者の在宅ケアニーズと関連要因について調査した結果,サービス実施への賛成と利用ニーズは高く,配偶者の有無,自覚症状の有無,慢性疾患の有無,ADL,年齢がニーズに関連していた。

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