- 著者
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臼井 敬太郎
- 出版者
- 日本デザイン学会
- 雑誌
- 日本デザイン学会研究発表大会概要集
- 巻号頁・発行日
- vol.58, pp.60-60, 2011
1950年代後半から1960年代後半にかけて、良好な眺望を誇る日本各地の観光地において床面が旋回する回転展望台が数多く設置された。いずれも、その機能的特徴からシンボリックな形態となり、モダンデザインでまとめられている。山麓から索道あるいは鋼索鉄道で連絡される展望台は、モビリティーの延長線上にある展望装置としてもダイナミックさを演出するモダンなスタイルが適していたといえよう。このような形式の展望台として初の事例である京山八方閣は、運営する岡山電気軌道の設計による回転機構が組み込まれていた。展望室床下には、レールが円形に敷かれ、その上をドーナツ状の展望室床面を支える台車が走行する構造であった。後に開業していく大手鉄道会社運営による回転展望台に先駆けて、地方都市岡山で回転展望台が実現されたのは、路面電車を運行させる軌道敷設技術、限られた経営資源を創意工夫で加工する車両改良技術の集積が最大限生かされたゆえであった。