著者
高野 裕久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

気管支喘息,花粉症,アトピー性皮膚炎等のアレルギー疾患が急増し,その増加・増悪の主因として環境要因の変化が重要と考えられている。居住環境,衛生環境,食環境,水・土壌・大気環境等,多くの環境要因の変化が指摘されているが,これらの背景には化学物質の増加に代表される環境汚染の問題が共通して存在する。本講演では,環境汚染物質とアレルギー疾患増加・増悪の関連性について,我々のこれまでの知見を紹介する。臨床的に,いわゆるシックハウス症候群において,環境汚染物質によるアレルギー疾患の再燃や増悪がしばしば経験される。また,実験的にも,環境汚染物質は,種々のアレルギー疾患を増悪しうる。例えば,粒子と莫大な数の化学物質の集合体であるディーゼル排気微粒子とともに,黄砂,ナノ粒子,ナノチューブ等の粒子状,繊維状物質もアレルギー性気管支喘息を増悪する。また,ディーゼル排気微粒子に含まれる増悪要因としては,キノン類やベンツピレンをはじめとする脂溶性化学物質が重要である。プラスチック製品の可塑剤として汎用されているフタル酸エステル類,や農薬等の環境化学物質も,アトピー性皮膚炎や喘息を増悪する。これらによるアレルギー増悪メカニズムとしては,総じて,抗原提示細胞の局所における増加や活性化,Th2反応の亢進等が重要であることを示唆する知見が多い。また,いわゆる毒性影響により決定されたNOAELに比較し,低濃度で増悪影響が発現する物質も多い。in vitroの検討では,樹状細胞におけるCD86やDEC205,脾細胞におけるTCR発現,IL-4産生,抗原刺激による細胞増殖の増強をきたすものもあり,増悪機構の解明と共にバイオマーカーとしても重要と考えられる。物質によっては,樹状細胞のケモカインレセプターの発現増加に作用するものもあり,今後,さらに免疫系の幅広いステップで影響を検討することも重要と考えられる。

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